幼児172名を対象に乳酸菌K15のIgA産生増強効果を確認
千葉大学は11月9日、キッコーマン株式会社と共同で、幼児172名を対象にしたプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験により、乳酸菌K15のIgA産生増強効果を確認したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院小児病態学の菱木はるか講師、下条直樹教授らが、キッコーマン、産業技術総合研究所、徳島大学疾患酵素学研究センターらと共同で行ったもの。研究成果は、第50回日本小児感染症学会学術集会で発表された。
画像はリリースより
腸内に常在している乳酸菌や食物に含まれるプロバイオティクス乳酸菌は、人々の健康維持・増進に効果があることが知られている。その安全性の高さ、さらには発酵食品への応用の観点から、乳酸菌は食品・医薬品業界から非常に注目されている。特に免疫増強効果については多くの報告があり、さまざまな免疫疾患への効果が期待されている。
例えば、腸管、口腔、鼻腔等の粘膜面に分泌されるIgAと呼ばれる抗体は、病原菌やウイルスを排除するために大きな役割を果たしている。また、樹状細胞から産生されるインターフェロンαやインターフェロンβが感染抵抗性に重要であることが知られている。
乳酸菌食品の摂取が週1回以下の小児、乳酸菌K15摂取で発熱日数も低下
研究グループはこれまで、健康増進のために免疫機能を活性化する技術の開発を目指し、発酵食品由来の乳酸菌や食品成分の機能性に着目してきた。キッコーマンが独自に分離した乳酸菌の効果・効能について、これまでに乳酸菌K15のIgA産生増強効果や樹状細胞に対するインターフェロンα/βの産生誘導作用について実証してきた。その中でキッコーマンは乳酸菌K15を「アシスト乳酸菌」としてグループ内製品に応用。今回は乳酸菌K15のさらなる臨床効果の実証を試みた。乳酸菌K15は、加熱により不活化しても高いインターフェロンβ産生能が確認されており、安全性、保存性の観点から加熱菌体を用いた。
研究では、幼稚園に通う3~6歳の健康な幼児を対象に、プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験を実施。インフルエンザ流行期を含む4か月間(2016年11月〜2017年2月)に、乳酸菌K15またはプラセボ(デキストリン)を経口投与し、健康観察日誌から体温、感冒症状、欠席日数、試験食品・乳酸菌食品摂取歴(制限を設けず)などを収集した。試験開始前後で唾液を採取できた乳酸菌K15摂取群81例、プラセボ群81例について解析を行ったところ、唾液中IgA濃度について、乳酸菌K15群がプラセボ群に比べ有意に高い変化量を示した(K15群+3.20mg/dL、プラセボ群-12.48mg/dL、p=0.0443)。また、発熱日数においては2群で有意な差は認めなかったものの、他の乳酸菌食品の摂取が週1回以下である症例(K15群36例、プラセボ群41例)のみで解析を行ったところ、乳酸菌K15摂取群で発熱日数が有意に短縮されていた(K15群1.69日、プラセボ群3.17日、p=0.0423)という。
研究グループは、「今後は乳酸菌K15の効果をさらに検証するとともに、ウイルス感染症が流行する中でも健康的な暮らしをサポートできるよう、乳酸菌K15を含む食品の開発を進めていく予定」と述べている。
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