古くから認識されていた「説明できないガラクトース血症」
東北大学は11月8日、国の指定難病のひとつであるガラクトース血症の新たな病因遺伝子として「GALM」を同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科小児病態学分野の和田陽一医師、菊池敦生助教、市野井那津子特任助手、坂本修准教授、同大東北メディカル・ メガバンク機構副機構長呉繁夫教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学雑誌「Genetics in Medicine」オンライン版にて公開された。
画像はリリースより
ガラクトース血症とは、ガラクトースを代謝する経路のいずれかの障害により、血中のガラクトース濃度が上がった状態を指す。母乳やミルクに含まれる乳糖は、新生児や乳児にとって主要なエネルギー源で、小腸でグルコースとガラクトースに分解されて体内に吸収される。このガラクトースを身体がエネルギーやさまざまな目的に利用するためには肝臓に取り込み、グルコースへと変換する必要があるが、このどこかで異常が起こるとガラクトース血症となる。
肝臓でのガラクトースの代謝は主に Leloir経路が担っており、4つの酵素が知られている。このうち3つの酵素(GALT、GALK1、GALE)の欠損では、ガラクトース血症(それぞれガラクトース血症I型、II型、III型)を起こすことが知られていた。しかし、ガラクトース血症の患児の中には、いずれの原因も見つからない「説明できないガラクトース血症」が存在することは古くから認識されており、原因解明が急務だった。
Leloir経路のGALM酵素が欠損
今回の研究では、東北大学病院で診察している未診断のガラクトース血症患者の全エクソーム解析を実施。その結果、GALMという新規病因遺伝子が同定され、この患者ではLeloir経路のGALM酵素が欠損していることが判明したという。
さらに、指定難病のGAL欠損症やその他の原因を検索して、未診断の症例を国内から集めてゲノム解析を行った。その結果、合計8症例のGALM欠損症を同定。臨床症状や経過を比較したところ、どの症例でもガラクトース摂取を制限した治療が行われていたが、2例では白内障を合併しており、他のガラクトース血症同様に早期に適切な治療を行う必要があることが示されたとしてる。
研究グループは、今回明らかとなった新型のGALM欠損症を「ガラクトース血症 IV型」と命名。また「新生児マススクリーニングで診断されるガラクトース血症患児の原因解明とその健康管理に貢献すると期待される」と述べている。
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