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【徳島大研究グループ】スタチンが大動脈解離抑制-「既存薬の再開発」で新知見

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2018年11月09日 AM10:15


■RWD解析から効果確認

徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床薬理学分野の研究グループは、医療現場で使用されている既存薬に新たな薬効を見出すドラッグリポジショニング(DR)研究で、脂質異常症治療薬「」に大動脈解離の発症を抑える効果があることを明らかにした。疾患モデル動物での検証に、実臨床での投薬結果を反映したリアルワールドデータ(RWD)の解析を加え、異なる二つの方法でその効果を確認した。ほかにも、抗癌剤の副作用を抑制する効果を既存薬に見出す研究を進めており、来年にもその成果の一部を公表する計画だ。

石澤教授(右)、座間味准教授

臨床薬理学研究室の石澤啓介教授(徳島大学病院薬剤部長)、座間味義人准教授(同副薬剤部長)らの研究グループは、以前からDR研究に取り組んできた。その一環として、ピタバスタチンには血管内皮機能改善作用があることに着目。血管内皮機能の破綻が起点になって大動脈解離が発症することを手がかりに、同剤にはその発症を抑制する効果があるとの仮説を立てて、検証を進めた。

一酸化窒素合成酵素阻害剤L-NAME、、β-アミノプロピオニトリルの投与によって大動脈解離を発症するモデルマウスを作製。ピタバスタチンを経口投与した群の大動脈解離発症率は、投与しなかった群に比べて有意に低くなることを見出した。

これを受け、国内で副作用が疑われた約30万症例の報告を集積したデータベース「JADER」を解析した結果、大動脈解離を発症した患者数は、スタチン非服用患者では9万5090人のうち113人(発症率0.12%)だった一方、スタチン服用患者では1万6668人のうち6人(同0.04%)で発症率は有意に低かった。

ピタバスタチンに限定すると、同剤の非服用患者10万9966人のうち、発症者は118人(同0.11%)、服用患者では1792人のうち1人(同0.06%)で、発症率は低い傾向にあった。RWDの解析でも、動物実験と同じ結果を得ることができたという。

石澤氏は「細胞や動物で検証する基礎研究と、臨床のビッグデータ解析という二つの切り口でDR研究に取り組んできた」とし、「基礎研究の結果をビッグデータ解析で補強する場合もあるし、ビッグデータ解析で見出した成果を基礎研究で検証する場合もある。異なる二つの方法で検証することで信頼性が高まる」と強調する。

このほか、既存薬の中から、心肺停止状態で病院に搬送された患者の予後を改善する作用を持つ薬剤を見つける研究にも取り組んでいる。日本医療データセンターが保有する国内約300万症例のレセプト情報を解析。心肺停止状態で運び込まれ、治療を受けた患者の生存退院率に影響を及ぼす薬剤を探索し、ニトログリセリン、、チオペンタールの3剤を候補薬剤として見出した。

併存疾患の治療に用いられたこれらの薬剤は、意図せずに生存退院率を高めていることが明らかになった。今後、心肺停止モデルマウスを作製し、基礎研究でもその効果を検証したい考えだ。

抗癌剤の副作用を抑制する効果を既存薬に見出す研究も推進している。RWDを解析して候補薬剤を探索し、疾患モデルマウスでのその効果を検証している段階だ。良好な成果が得られつつあるため今後、公的研究費の獲得や企業との共同研究に発展させたいという。

石澤氏は「副作用によって癌の治療を継続できないことが、臨床現場で問題になっている。しかし、抗癌剤の副作用を抑制する薬剤の開発に、製薬会社がコストをかけて取り組むことは少ないだろう。この領域では特に既存薬の活用が適している」と話す。

DRは、既存薬に新たな作用を見出し、別の疾患の治療薬として開発する創薬戦略。開発中止リスクを軽減できるほか、開発期間を短縮し費用も抑制できるとして近年、この領域の研究が盛んになっている。

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