周産期の子どもの合併症と関連する妊娠中の飲酒
東北大学は11月5日、妊婦における飲酒や禁酒が妊娠高血圧症候群リスクに及ぼす影響を明らかにした研究結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科産科学婦人科学分野の岩間憲之助教(当時)と、東北医科薬科大学医学部衛生学・公衆衛生学教室目時弘仁教授らのグループによるもの。研究成果は「Hypertension Research誌」電子版に掲載されている。
画像はリリースより
妊娠中の飲酒は周産期の子どもの合併症と関連することが知られており、特に多量飲酒では胎児アルコール症候群や低出生体重、早産、児の神経発達障害をもたらすと考えられてきた。しかしその一方で、妊娠中の飲酒の母体に対する影響については、詳細な解明がされていなかった。
妊娠判明段階での禁酒で、妊娠高血圧症候群リスクが軽減
妊娠高血圧症候群は妊婦の5~10%弱に生じる病気であるが、研究グループは、2011~2014年にかけて日本で行われたエコチル調査より7万6,940人のデータを用いて、妊娠中の飲酒が妊娠高血圧症候群に及ぼす影響について調査した。
その結果、妊娠初期の段階で、お酒について「現在も飲んでいる」と回答した妊婦は7,323人(全妊婦の9.5%)、「以前は飲んでいたが止めた」と回答した妊婦は44,253人(全妊婦の57.5%)だった。妊娠中後期の段階でお酒について、「以前は飲んでいたが、今回の妊娠に気づいて止めた」と答えた妊婦は38,107人で、妊婦全体の49.5%だったという。一方で、「現在も飲んでいる」と答えた妊婦は1,965人で妊婦全体の2.6%で、決して少なくなかった。
さらに、毎日日本酒1合またはビール大瓶1本程度の飲酒を行った場合、飲酒をしていない妊婦に比較して妊娠高血圧症候群のリスクが高いことが判明。このリスクは、妊娠前の肥満や既往歴、喫煙状況、教育歴や収入などの社会経済要因を加味して検討してもなお、3.45倍(95%信頼区間 1.32-9.05)と、飲酒は妊娠高血圧症候群と明らかに関連していたとしている。一方、「以前は飲んでいたが止めた」と回答した妊婦では、妊娠高血圧症候群のリスクは0.90倍(95%信頼区間 0.82-0.99)と低くなった。したがって、妊娠が判明した段階で飲酒しないように努めることが、妊娠高血圧症候群リスクを予防するために重要であると考えられる。
今回の研究は、妊婦における禁酒の重要性を妊娠高血圧症候群の面から明らかにした初めての報告。研究グループは、「妊娠が分かった段階で飲酒しないように努めることが重要で、医療従事者や保健指導従事者は飲酒を止められているかどうか確認をすることが重要であると考えられる」と述べている。
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