吸入ステロイドによる対症療法では治療効果の低い患者も
千葉大学は11月6日、ぜんそくなどのアレルギー疾患における新たなブレーキ経路を発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院免疫発生学教室の中山俊憲教授の研究グループが、かずさDNA研究所先端研究開発部オミックス医科学研究室の遠藤裕介室長の研究グループと共同で行ったもの。研究成果は、米科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
花粉症やぜんそく、アトピー性火皮膚炎などのアレルギー疾患は増加の一途をたどっており、国民の約3割が罹患しているとの報告もある。難治性アレルギー疾患の代表格でもあるぜんそくは、多因子により調節され、人それぞれに誘導経路も重症度も異なることが知られている。そのため、従来の吸入ステロイドによる対症療法だけでは治療効果の低い患者も多く、新たな治療法の開発が求められている。
「DUSP10」がTh2細胞の機能を抑制
研究グループは、二重特異性タンパク質ホスファターゼ群のDUSP10という分子がアレルギー反応を引き起こす病原性2型ヘルパーT(Th2)細胞の機能を抑えることを新たに発見。さらに、DUSP10を人為的に調節することで病原性Th2細胞だけでなく、非常に強いアレルギー誘導能を持つ2型自然リンパ球の機能を抑えることができ、ぜんそくが起こらなくなることが判明したという。
今回の研究により、ぜんそくなどをはじめとしたアレルギー疾患の新たなブレーキ役としてDUSP10が同定され、病原性Th2細胞と2型自然リンパ球のIL-33応答性の違いを決めている新たなメカニズムが明らかになった。研究グループは、「DUSP10分子がぜんそくや慢性副鼻腔炎といった難治性慢性アレルギー疾患の画期的な治療ターゲットとして大いに役立つだけでなく、新たなバイオマーカーとしての可能性も期待される。また、慢性アレルギー疾患治療薬の開発に新たな可能性をもたらすことが考えられる」と述べている。
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