分子機序が不明だったオメガ3脂肪酸の抗炎症作用
順天堂大学は11月5日、DHAやEPA、α-リノレン酸といったオメガ3脂肪酸の食事摂取が、アレルギー性結膜炎(花粉症)を改善させるメカニズムの解明に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 生化学・細胞機能制御学の横溝岳彦教授と、眼科学の平形寿彬、松田彰准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「The FASEB journal」オンライン版に公開されている。
画像はリリースより
オメガ3脂肪酸は、ヒトの体内で作ることができないため食事から摂取する必要がある必須脂肪酸で、亜麻仁油(アマニ油)や魚油に多く含まれている。しかし、近年の食の欧米化によりオメガ3脂肪酸の摂取量は低下している。
近年、オメガ3脂肪酸の持つ抗炎症作用が注目され、喘息などのアレルギー疾患への効果が報告されている。一方で、その詳細な分子機序は明らかにされていなかった。
オメガ3脂肪酸に炎症性脂質メディエーターの産生抑制効果
研究グループは、オメガ3脂肪酸の持つ抗炎症作用がアレルギー性結膜炎にも有用ではないかと考え、オメガ3脂肪酸を豊富に含む亜麻仁油を混ぜた餌をマウスに与え、アレルギー性結膜炎が改善するか検証した。
まず、欧米の花粉症の原因として最も多いブタクサ花粉を用いてアレルギー性結膜炎マウスモデルを作成。オメガ3脂肪酸の食事効果を検証するために、マウスにはオメガ3脂肪酸を豊富に含んだ亜麻仁油を4%含有する餌を2か月間与えた。その結果、オメガ3脂肪酸を摂取させたマウスでは通常食(亜麻仁油を含まない)を摂取したマウスと比較し、花粉によるアレルギー性結膜炎の症状が改善することを確認した。
次に、オメガ3脂肪酸のアレルギー性結膜炎に対するメカニズムを検証するために、質量分析計を用いて結膜中の脂質メディエーターの網羅的な解析を実施。その結果、通常食摂取マウスではプロスタグランジン類やトロンボキサン、ロイコトリエンB4などのアレルギー炎症を引き起こすさまざまな炎症性脂質メディエーターが結膜中に検出されたが、オメガ3脂肪酸を摂取したマウスの結膜中では、これらの炎症性脂質メディエーター量が著しく減少し、オメガ3脂肪酸であるEPAの量が大きく増加していた。
これらの結果から、アレルギー性結膜炎ではさまざまな炎症性脂質メディエーターにより症状が引き起こされていること、オメガ3脂肪酸の摂取がアレルギー性結膜炎の改善に有効であることが明らかとなったとしている。
この研究結果は、罹患率の非常に高いアレルギー性結膜炎の新規予防・治療法の開発につながることが期待される。オメガ3脂肪酸摂取はヒトにおいても極めて安全な介入法であり、研究グループは今後、ヒト花粉症患者に対してもオメガ3脂肪酸の摂取が有効な治療法になるかどうか、検証を重ねていきたいとしている。
▼関連リンク
・順天堂大学 プレスリリース