■薬価改定も3社が上方修正
国内製薬大手4社の2019年3月期中間決算が出揃った。アステラス製薬とエーザイは増収増益、武田薬品も特殊要因がなければ増収となり、降圧剤「オルメサルタン」の特許切れで業績の底にある第一三共を除いた3社が、通期売上・利益予想の上方修正を行った。武田は最終減益から一転して増益、アステラスは減収から横ばいへと期初予想を見直した。両社の海外売上比率は70%水準に達しており、国内で薬価制度の抜本的改革が実施される中、想定よりも健闘した。
武田は、抗癌剤「ベルケイド」の物質特許満了による売上減や武田テバへの長期収載品の売却による影響で0.1%の減収となったが、特殊・外部要因を除いた実質ベースでは4%増収となった。薬価改定が行われた日本においても実質で4%増、米国で6%増、欧州・カナダで6%増、新興国で2%増と全ての地域で増収となった。
グローバル製品では、後発品が参入するベルケイドが10%減となったが、通期で見ると後発品の参入状況が当初の想定から変化する見通しから、期初予想に対して355億円の増収要因が見込めるとした。
アステラスも、国内では薬価改定の影響に加え、主力の降圧剤「ミカルディス」が後発品参入で約6割の落ち込みとなり、8%の減収となったが、米州で9%増、欧州などのEMEAで2%増、アジア・オセアニアで4%増と海外でカバーし、世界全体売上は1%の増収を確保。
特に抗癌剤「エンザルタミド(一般名)」が米州で過去最高の四半期売上となり世界全地域で伸長し、約17%増の二桁成長を達成した。過活動膀胱(OAB)フランチャイズも、「ミラベグロン」が19%増となり、フランチャイズ全体で約9%増と堅調だった。
エーザイは、米国で制吐剤「アロキシ」が落ち込み、地域売上で25%減となったが、日本を含むそのほかの地域で拡大し9%増と堅調に推移した。米メルクの抗癌剤「キイトルーダ」関連の収入約221億円を除いた医薬品事業も増収で着地した。
一方、昨年度に引き続き厳しい状況なのが第一三共。オルメサルタンの75%減が直撃し約5%の減収となった。抗凝固剤「エドキサバン」は世界全地域で成長し53%増と通期で1000億円をうかがうものの、抗潰瘍剤「ネキシウム」も13%減と主力品の落ち込みが業績を圧迫した。
薬価引き下げ影響でワクチンを含めた国内医薬も5%減と苦戦した。米国事業では子会社「ルイトポルド」が12%増と成長した一方で、第一三共インクがオルメサルタンに加え、糖尿病治療薬「ウェルコール」の後発品参入により売上がほぼ半減した。
利益面では、アステラスとエーザイが大幅増益、第一三共が前期に「CL-108」に関する無形資産の減損損失302億円を研究開発費として計上していた反動で増益となった。一方、武田は前期に和光純薬の株式売却益を計上したことや、アイルランドのシャイアー買収関連費用で減益となった。
通期は、エーザイが増収二桁増益、アステラスが売上横ばいの増益、武田は微減収二桁増益を見込む。第一三共は減収営業増益を予想するも、純利益は減益となる見込み。