医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 中皮腫がんマーカー抗体SKM9-2が認識する構造を同定-神奈川県がんセンター

中皮腫がんマーカー抗体SKM9-2が認識する構造を同定-神奈川県がんセンター

読了時間:約 1分25秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年11月05日 AM10:45

特異度99%、感度92%で中皮腫細胞を検出できる抗体

神奈川県立がんセンター臨床研究所は11月1日、中皮腫がんのマーカー抗体「」の認識領域()を同定したと発表した。この研究は、同研究所の辻祥太郎主任研究員と今井浩三顧問らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより

アスベストを吸い込むことで発症する中皮腫は、有効な治療法と診断法が確立されていないため、中皮腫を早期に発見し、的確に判断できる診断法の開発は、より有効な中皮腫治療のための第一歩となる。

中皮腫がんのマーカー抗体であるSKM9-2は、特異度99%、感度92%で中皮腫細胞を検出できる中皮腫特異性を持つ抗体。先行研究では、巨大分子シアル化HEG1を認識していることが明らかになっていたが、HEG1のどの部位を認識しているのか、どのようなシアル化糖鎖が認識に関わっているのかは、わかっていなかった。

ニチレイバイオサイエンスが病理研究用試薬として販売開始

今回、研究グループは、HEG1の部分長変異体を用いて抗体の結合候補領域を狭め、最終的に11アミノ酸からなる領域を認識していることを明らかにした。次に、この11アミノ酸配列のどの残基にどのような糖鎖が結合しているかを質量分析とレクチン結合解析により同定。同定した領域のアミノ酸配列の置換や糖鎖の切断により抗体の反応性が大きく減少したため、抗体はアミノ酸配列と糖鎖によって形成される構造を認識しており、糖鎖の存在が中皮腫への高い特異性を規定しているとことがわかったという。

この研究により、中皮腫特異的に形作られる中皮腫マーカーの構造が明らかとなったため、SKM9-2を用いた中皮腫診断の信頼性が高まり、これまでの診断法よりも中皮腫細胞を的確に診断することができるようになると考えられる。また、このエピトープを標的とした分子標的治療法を開発することで、治療困難な中皮腫に対する新たな治療法の開発に繋がることが期待される。

なお、SKM9-2は、2018年10月31日から株式会社ニチレイバイオサイエンスより病理研究用試薬「ヒストファイン 抗シアル化HEG1(SKM9-2)」として販売開始となり、実用化されている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • トイレは「ふた閉め洗浄」でもエアロゾルは漏れる、その飛距離が判明-産総研ほか
  • AYA世代の乳がん特異的な生物学的特徴を明らかに-横浜市大ほか
  • 小児白血病、NPM1融合遺伝子による誘導機序と有効な阻害剤が判明-東大
  • 抗血栓薬内服患者の脳出血重症化リスク、3種の薬剤別に解明-国循
  • 膠原病に伴う間質性肺疾患の免疫異常を解明、BALF解析で-京都府医大ほか