■幸野委員は4月実施を主張
消費税率10%引き上げ対応の薬価改定をめぐっては、17日の中医協総会で製薬業界からも「あくまで増税対応」として来年10月実施が強く要望されていたが、この日の薬価専門部会では、消費税対応の薬価改定の骨子取りまとめに向けた議論がスタートした。
診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、あくまで消費税引き上げに伴う改定であり、実勢価に上乗せする臨時的な改定を実施する方向性に賛意を示した。これに対して、幸野委員は「通常改定と違い、改定後に2%上乗せされるわけで、その後の薬価調査を実施した上で20年度改定を行わなければ国民負担につながる」と強調し、来年4月の改定前倒しを要求。4月の改定後実勢価に消費税率を上乗せ後、改めて20年度改定に向けた薬価調査を実施するのが精緻な方法と主張した。
医薬品卸など関係者からは、頻繁な薬価調査の実施による負担増に懸念が示されているが、幸野氏は「21年度からは毎年薬価改定が行われる。いずれはそういう体制になるので良い試金石になるのではないか」と強調。これに対し、松本委員は臨時的な改定を前面に主張し、来年4月と10月の二段階改定に反対した。
支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「通常改定と異なる臨時改定の位置づけを明確にするならば、10月改定は妥当」との考えを示す一方、「消費税上乗せ後の実勢価を20年度改定に反映させることは難しい。半年分の実勢価を調整する施策を検討できないか」と提案した。
宮近清文委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)も「今回はあくまでも消費税対応との原則に立ち、来年10月に実勢価を踏まえた上で上乗せする臨時改定を行うことが自然」との立場を表明。平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)も「あくまでも臨時的な改定であり、原則に則って対応すべき」と述べ、来年10月の薬価改定を支持。同じ支払側の幸野委員と意見が分かれる格好となった。
製薬業界代表の上出厚志専門委員(アステラス製薬上席執行役員渉外部長)は、「薬価改定はあくまでも2年に1回の診療報酬改定と同時期と理解。来年の消費税改定は、税率引き上げ分を転嫁するための暫定的な改定であり、20年度改定は来年9月の薬価調査の結果をもとに実施するものと考えている」と改めてクギを刺した。
それでも幸野委員は、「消費税対応は精緻化しないといけない」と重ねて強調。来年4月に薬価改定を実施した方が精緻なデータが得られるとし、「医薬品卸や医療関係者と負担と国民負担のどちらを取るのか。関係者の負担軽減は理由にならない」と反発した。