7,000人以上が参加した国際共同試験のデータを解析
独ベーリンガーインゲルハイム社と米イーライリリー社は10月9日、心血管疾患を有する成人2型糖尿病患者の平均推定生存期間の延長に関するエンパグリフロジンの新たなデータを公表した。この解析結果は、「Circulation」に掲載されている。
エンパグリフロジン(「ジャディアンス(R)」)は、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害剤。心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬だ。
今回の解析対象になったEMPA-REG OUTCOME(R)は、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照の国際共同試験。42か国から心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病の患者7,000人以上が参加した。試験では、標準治療にプラセボを上乗せした群とエンパグリフロジン(10mgまたは25mg 1日1回)を上乗せした群とで長期の心血管安全性を評価した。
患者の生存期間が平均で2.5年長くなると推定
今回、EMPA-REG OUTCOME試験で明らかとなった有益な影響が、エンパグリフロジンをさらに長期間使用した場合にも継続すると仮定。生命保険数理法を用いて解析したところ、エンパグリフロジン投与群はプラセボ投与群よりも平均推定生存期間が1~4.5年(年齢により異なる)長くなることが示された。この解析から、エンパグリフロジン投与により患者の生存期間が延長する可能性が示唆されたとしている。
同試験の被験者7,020人から得られたデータの解析では、エンパグリフロジン群は、プラセボ群と比較して、どの年齢においても平均推定生存期間が長いことが示された。具体的には、45歳の被験者における平均推定生存期間は、エンパグリフロジン群では32.1年、プラセボ群では27.6年であり、平均推定生存期間の差は4.5年となった。50歳、60歳、70歳、80歳の被験者において、プラセボ群と比較してエンパグリフロジン群では、平均推定生存期間がそれぞれ、3.1年、2.5年、2年、1年長くなるという結果が示されたという。
Circulation誌に掲載された論文の筆頭著者であるブリガム・アンド・ウィメンズ病院循環器内科のBrian Claggett, Ph.D.は、「これまでの研究において、心血管イベントの既往がある60歳の2型糖尿病患者は、同年齢の健常人と比較して、平均生存期間が最大12年短くなることが推定されている。今回の新たな解析では、エンパグリフロジンによって、このような患者の生存期間が平均で2.5年長くなることが推定された」と述べている。