欧州心臓病学会発表の数式モデル「Risk-SCD」
国立循環器病研究センターは10月30日、海外で発表された肥大型心筋症の突然死リスク予測モデルの日本人に対する有用性を初めて報告したと発表した。この研究は、同センター心不全科の中川頌子医師、岡田厚医師、泉知里部長らの研究チームによるもの。研究成果は「American Journal of Cardiology」に掲載された。
肥大型心筋症は突然死の原因疾患のひとつであり、日本人の有病率は500人に1人ともいわれる特定疾患。とくに、若年層で致死性不整脈を起こして突然死につながるなど社会的損失の大きい疾患であるため、患者ごとに突然死リスクを予測し植込み型除細動器(ICD)など適切な突然死予防治療を行うことが重要だ。
欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインでは、2014年にESCが発表した突然死リスクを予測する数式モデルの「Risk-SCDモデル」で算出された5年以内の突然死リスクが6%以上の症例に対してICDの使用を推奨している。しかし、日本人では欧米人と異なる肥大型心筋症の表現型が多いことも報告されており、日本人でも同モデルが有用かどうかはこれまで十分に検証されていなかった。
左室駆出率が保たれた症例では日本人にも適用可能
研究チームは、国循で2009~2013年に突然死リスクの評価を行った肥大型心筋症患者370名を5種類の肥大型心筋症の表現型(1:左室流出路閉塞型、2:心室中部閉塞型、3:心尖部型、4:非閉塞型、5:拡張相)に分類し、それぞれの表現型における同モデルの有用性について後ろ向きに検討した。その結果、左室駆出率の保たれた1~4の症例、およびそれらの各類型では同モデルは突然死リスクの予測に有用だったが、左室駆出率の低下した5では同モデルは有用ではないことがわかったという。
画像はリリースより
今回の研究から、左室駆出率が保たれた症例であれば同モデルは日本人にも適用可能であることが示唆された。今後、研究チームは、より多くの患者に対し適切な突然死リスクの予測やICD植込みなどの予防治療が可能となるよう、同モデルの臨床応用を推進するためのガイドライン策定などを目指すとしている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース