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制御された細胞死ネクロプトーシスの可視化に成功-東邦大

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2018年10月31日 AM11:00

アポトーシスと同様に制御された細胞死ネクロプトーシス

東邦大学は10月29日、新たに開発したセンサータンパク質を使って、「ネクロプトーシス」と呼ばれる、制御された細胞死の様子をイメージングする技術を世界で初めて開発したと発表した。この研究は、同大医学部生化学講座の中野裕康教授と村井晋助教ら、東京大学大学院薬学系研究科の三浦正幸教授、北海道大学低温科学研究所の山口良文教授、東京大学大学院理学系研究科の白崎善隆博士(JSTさきがけ専任研究者)らと共同で行われたもの。研究成果は「Nature Communications」にて掲載された。

ネクロプトーシスは、アポトーシスと同様に制御された細胞死だ。しかし、アポトーシスとは異なり、細胞膜が早期に破裂することから死細胞の周囲に強い炎症を誘導する。ネクロプトーシスは、近年の研究から心筋梗塞や脳梗塞などの虚血性疾患の悪化に寄与することが明らかになっている。これらの細胞死の進行を生きた培養細胞の細胞内で可視化する技術の開発は、細胞死がどのような状況で起こっているのか、またその結果としてどのような反応を周囲の細胞に誘導するのかを解析する上で重要だ。

アポトーシスについてはこれまで、細胞死の進行時にカスパーゼと呼ばれる酵素が活性化することを利用して、FRETという技術を用いて可視化することに成功していた。しかし、ネクロプトーシスの場合には、カスパーゼのようなタンパク質分解酵素が活性化しないために、同様の方法でイメージングすることはできない。

細胞膜障害を誘導する分子「MLKL」を利用

今回、研究グル今回、研究グループは、ネクロプトーシスが誘導される際に細胞膜障害を誘導する分子であるMLKLを利用して、FRET用のセンサータンパク質を作成。世界で初めて、ネクロプトーシスの様子を蛍光イメージングする技術を開発した。ネクロプトーシス誘導時にMLKL分子に起こる構造変化に合わせてFRET反応が起こるように蛍光タンパク質と組み合わせ、マウスやヒトの細胞でTNFなどの刺激によりネクロプトーシスが誘導された際に、ネクロプトーシスの誘導の様子をリアルタイムで可視化できるセンサータンパク質を開発することに成功したという。


画像はリリースより

研究グループは、このタンパク質をSMART(Sensor for MLKL activation by RIPK3 based on FRET)と命名。どのようなメカニズムでSMARTにおいてFRET反応が起こっているかをさまざまな手法により検討した結果、このSMARTは細胞質から細胞膜へのMLKL分子の移行の様子を検出していることが明らかとなった。また、このイメージング技術により、細胞死に伴って放出され、さまざまな病態に関与する細胞内物質「」の放出パターンには異なる2種類があることを明らかにしたとしている。

今回の成果について、研究グループは、「ネクロプトーシスおよびネクロプトーシスに伴い放出されるDAMPsが関与する病態の解明や、治療技術の開発が加速することが期待される。また新規に開発したセンサータンパク質を発現する遺伝子改変マウスなどを作成することで、ネクロプトーシスが体の中でどのような状況で起こっているかを解析できるような新たな手法を提供できる可能性を示すことができた」と述べている。

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