構造・機能の両方の観点から、血管を解析できる非侵襲技術
京都大学は10月25日、非侵襲で血管を可視化できる光超音波イメージング技術について、異なる2波長の光の照射方法を逐次照射から交互照射に変更することで、より解像度が高く、動脈と静脈が精度良く分離される画像を得ることに成功したと発表した。この研究は、同大医学研究科の戸井雅和教授(兼・医学部附属病院教授)、同大医学部附属病院の松本純明特定助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
光超音波イメージングは、血中のヘモグロビンが光を吸収した後に発する超音波を画像化することで血管を可視化できる非侵襲の生体イメージング技術。酸化・還元ヘモグロビン各々に対応する異なる波長の光を用いることで、酸素飽和度に対応する指標も算出可能。構造および機能、両方の観点から血管を解析できる技術だ。
腫瘍血管の解析や再建手術への応用に期待
研究グループはこれまでに、光超音波イメージングを使って、乳がんの腫瘍血管が描出できることや、薬物療法で画像に変化が見られることを明らかにし、また、手掌の血管を対象に血管の形状解析技術を開発するなど、装置や解析手法の改良を重ねてきた。
今回の研究では、2波長の光の照射方法を逐次照射から交互照射に変更することで、異なる波長間での位置ずれが解消され、動脈と静脈が精度良く分離される画像を得ることに成功。乳房では、従来の超音波画像を同じ座標軸で同時取得し、その2次元画像を積分することで、3次元の超音波画像を生成、光超音波による3次元血管像と重ね合わせることができるという。
今後は腫瘍血管の形状や酸素飽和度について、詳細な解析を行う予定。乳房以外では、四肢の細い穿通枝血管が精細に可視化できることが判明。形成外科において、再建手術の術前マッピングへの活用が期待される。
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・京都大学 研究成果