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不眠症治療薬の開発につながる新たな作用機序を有する低分子化合物を同定-筑波大

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2018年10月29日 PM12:30

強力な催眠効果を有するアデノシンA2AR作動薬

筑波大学は10月25日、アデノシンA2A受容体からのシグナルを増強させる作用を持つ新規低分子化合物「」が、徐波睡眠の総量を増加させ、自然に近い眠りを促すことを発見したと発表した。この研究は、同大国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の斉藤毅助教、ムスタファ・コルクタタ大学院生、長瀬博教授、ミハエル・ラザルス准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Neuropharmacology」オンライン版にて先行公開されている。


画像はリリースより

アデノシンは、脳内で眠りを誘発する内因性物質として知られている。マウスやラットを用いた先行研究により、アデノシンA2A受容体作動薬の強力な催眠効果が示されていたが、体温の低下や低血圧・頻脈などの循環器系の副作用があり、アデノシンA2A受容体作動薬の不眠症治療薬としての臨床応用を目指す上で大きな壁となっていた。

A2AR PAM-1には副作用なく自然に近い眠りを促す効果が

研究グループは、受容体のリガンド結合部位とは異なる部位(アロステリック部位)に作用してそのシグナルを増強する「ポジティブアロステリック調節因子(PAM; Positive Allosteric Modulator)」に着目。アデノシンA2A受容体のPAMとして同定した新規低分子化合物「A2AR PAM-1」をマウスの腹腔内に投与したところ、生理食塩水を投与したマウスと比較して、容量依存的な徐波睡眠の総量の増加と覚醒時間の減少が見られた。一方、レム睡眠の持続時間やレム睡眠・徐波睡眠の出現回数に変化はなかったという。また、脳波測定の結果、生理的な睡眠とA2AR PAM-1によって誘導された睡眠との間で大きな差がなかったことから、A2AR PAM-1は自然に近い眠りを促すことが示唆された。

アデノシンA2A受容体作動薬で見られたような体温の低下や、低血圧、頻脈、洞性不整脈といった循環器系の副作用も見られなかったため、アデノシンA2A 受容体のPAMとして機能する低分子化合物は、従来の睡眠薬とは異なる新しい作用機序の不眠症治療薬として、特に入眠困難を訴える患者の治療への応用が期待される。この成果を次世代の不眠症治療薬の開発につなげるため、さらなる研究の蓄積が必要だ、と研究グループは述べている。

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