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国内生薬栽培で成功事例-南木曽町と養命酒が協業

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2018年10月26日 AM10:30


■4年間の試作で成果創出

漢方薬の原料となる薬用作物の安定供給を目指し、実需側の漢方薬メーカーと産地側のマッチングを通じて国内栽培を目指す動きが進められているが、いくつかの地域では成功事例が出てきた。厚生労働省、、日本漢方生薬製剤協会が中心となって開催されている「薬用作物の産地化に向けた地域説明会及び相談会」では、長野県南木曽(なぎそ)町の「南木曽薬草の会」が養命酒製造とマッチングし、「」「」の試験栽培に取り組み、日本薬局方が定めた規格に適合した品質を達成する成果が紹介された。

漢方薬の使用量が増加する中、原料生薬は大半を中国などの海外輸入に依存しており、安定供給に向けては国内生産の推進・拡大が喫緊の課題となっている。日漢協、厚労省、農水省が実需者と生産者をマッチングする「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」を2013年から実施し、16年から全国農業改良普及支援協会と日漢協が設立した薬用作物産地支援協議会が地域説明会・相談会として引き継ぎ、取り組みを進めてきた。

13~17年度の5年間で実需側と生産者のマッチングを支援した結果、36件で試作が開始され、18件が継続中、そのうち1件では取引開始に至っている。しかし、試作を開始したうち17件では試作に失敗したり、取引価格や支払条件に合意できないなどで折衝を中止していた。薬用作物を栽培するために何から着手していいか、どういった知見が必要か分からないとの悩みに応え、9月から全国8地域で開催されている今年の地域説明会では、六つの生産団体の取り組み事例が紹介された。

24日にさいたま市で開催された関東地域での説明会には29人の生産者が参加。その中で、長野県は栽培農家が減少している問題を抱え、全国的にも薬用作物栽培への積極的な支援を行っているが、今回は南木曽町の事例が紹介された。

13年3月に薬草調査を開始し、15年5月に「南木曽薬草の会」を設立。薬草栽培を開始した。しかし、当初は品目を絞らずに栽培を行っていたこともあり、成果を上げることができなかったという。契機になったのは15年に開催された地域説明会。マッチング要望書を提出し、養命酒製造とのマッチング成立にこぎつけた。

養命酒製造からボウフウの種子とイカリソウ苗の提供を受け、ボウフウとキバナイカリソウの栽培を開始。準備としては文献から栽培地に合った栽培方法を検討し、行政の支援を受けるために生産者が主体となって調べたところ、長野県に「地域発元気づくり支援金活用事業」という制度があることを知り応募。16~18年の3年間で約200万円の支援金を得て、遊休農地を再生し、その土地を圃場に試験栽培に着手した。養命酒製造が研究栽培で得られた知見も試作に取り入れながら、栽培開始から4年で、ボウフウ、キバナイカリソウ(生薬名:インヨウカク)で日本薬局方が定めた規格に適合した品質を得ることができた。

成功の秘訣は「行政や自治体のバックアップ」「強力なリーダーの存在」「失敗してもあきらめない」の三要素。特に薬用作物は収益化に時間がかかり、栽培に手間がかかるため、収益は数年間ないと割り切ってでも栽培を続けられるかが成否を分ける。

南木曽薬草の会も、キバナイカリソウの試作で昨年は品質試験で不合格も今年合格を掴み、達成感がやる気につながっている。試行錯誤でも「楽しく栽培を行えており、参加者は増えている」という。長野県では生産者同士のネットワークを構築している環境があり、他の薬草栽培組合との交流機会も増えた。

一方、栽培方法の確立、機械の使用による栽培の省力化という課題も見えてきた。地域によって生産できる生薬が違うことから、地域ごとに栽培方法のマニュアル化を実現する必要性や、他の作物で用いる既存の機械を生薬栽培に活用していく検討も成功に近づけるためにやるべきことと言えそうだ。

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