活性化T細胞表面に発現、がん免疫を抑制するLAG-3
徳島大学は10月22日、免疫チェックポイント分子のLymphocyte Activation Gene-3(LAG-3)による免疫抑制機構を解明したと発表した。この研究は、同大先端酵素学研究所の丸橋拓海特任助教、岡崎拓教授らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学雑誌「Nature Immunology」オンライン版に掲載された。
現在、PD-1やCTLA-4を標的とした「免疫チェックポイント阻害剤」が注目を集めている。LAG-3は、新たな免疫チェックポイント分子として注目されており、すでにさまざまな疾患の治療標的として世界中で研究開発が進められている。
LAG-3は、ヘルパーT細胞の補助受容体であるCD4類縁分子として1990年に同定された。これまでに岡崎教授らを含むいくつかのグループによって、LAG-3は、活性化T細胞表面に発現すること、リンパ球の活性化を抑制することにより自己免疫疾患の発症を防いでいること、がん免疫を抑制することなどが報告されていた。しかし、LAG-3が実際にどのような免疫応答を、どのように抑制するかについては、よくわかっていなかった。
また、LAG-3はCD4よりも高い親和性でMHC classII(MHCII)と結合し、CD4とMHCIIの結合を競合的に阻害することによってT細胞の活性化を抑制すると考えられていたが、直接的な証明はなかった。そこで、今回の研究では、LAG-3のリガンドの探索と免疫抑制機構の解明を試みたという。
LAG-3がヘルパーT細胞を特異的に抑制
その結果、研究グループはLAG-3に結合することで免疫抑制作用を誘導するリガンドとして、ペプチド−MHC class II複合体(pMHCII)を同定。さらに、この結合がpMHCIIの構造に依存することを見出したという。この特徴的なリガンド認識によって、LAG-3が自己免疫疾患発症に関わるヘルパーT細胞を特異的に抑制していることを明らかにした。
画像はリリースより
また、LAG-3がどのような作用機序でヘルパーT細胞応答を抑制するのかを検討した結果、LAG-3がCD4のMHCIIへの結合をほとんど阻害しなかったことから、LAG-3はCD4との競合阻害とは異なるメカニズムで、ヘルパーT細胞を抑制することが判明したという。LAG-3はT細胞の表面に存在するが、細胞の外側でリガンドに結合する部分と細胞の内側で働く部分に分かれている。LAG-3の細胞内領域を欠失させた変異体が抑制能を失ったことから、LAG-3は細胞内領域を介して能動的に抑制性のシグナル伝達を行うことで抑制能を発揮していることが明らかとなったとしている。
今回の研究結果により、LAG-3による免疫抑制機構が明らかとなった。この機構は、他の免疫チェックポイント分子とは異なり、多様性の無い単一の分子が免疫系の多様性を制御しうるという点で非常に特徴的だという。研究グループは、「LAG-3を標的とすることによって、既存の免疫チェックポイント阻害剤とは異なる視点の新規がん免疫療法の開発が可能になる」と述べている。
▼関連リンク
・徳島大学 プレスリリース