45~74歳の約9万人を追跡した多目的コホート研究より
国立がん研究センター社会と健康研究センターは10月16日、多目的コホート研究(JPHC研究)の結果から果物・野菜摂取と膵がんの罹患リスクに関する報告を発表した。この研究の成果は、「International Journal of Cancer」オンライン版で公開された。
画像はリリースより
果物・野菜の摂取は、いくつかのがんに対する予防的効果の可能性が示されているが、膵がんとの関連について、これまでの研究結果は一定していない。そこで、研究グループは今回、多目的コホート研究であるJPHC研究より、1995年と1998年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2018年現在)管内に居住していた、45~74歳の男女約9万人を2013年末まで追跡した調査結果に基づき、果物・野菜摂取と膵がん罹患の関連を検討した。
研究グループは、138食品が含まれる食品摂取頻度調査をもとに、果物(17品目)・野菜(29品目)の摂取量によって4つのグループに分け、最も少ないグループと比較して、その他のグループでがんの罹患リスクが何倍になるかを調べた。解析では、性別、年齢、地域、BMI、喫煙、飲酒、糖尿病既往、膵がん家族歴、魚摂取量、肉摂取量、運動習慣、コーヒー摂取、エネルギー摂取量について、果物・野菜摂取のグループによる違いが結果に影響しないように統計学的に配慮した。今回の研究対象に該当した男女約9万人のうち、約16.9年間の追跡期間中に577名が膵がんと診断された。
果物摂取と膵がんリスク低下の関連、非喫煙者でより明瞭に
調査の結果、全果物摂取量の最も多いグループでは、最も少ないグループに比べて膵がん罹患のリスクが低下していたという。柑橘類(3品目)に限定した場合でも、ほぼ同程度でリスクの低下が認められた。果物摂取と膵がん罹患リスク低下の関連は、非喫煙者でより明瞭だった。
一方、全野菜摂取の最も多いグループでは、最も少ないグループに比べて膵がんリスク増加が認められた。特定の種類の野菜では、膵がんリスクとの関連は明らかではなかったという。全野菜摂取と膵がん罹患リスク増加の関連は、喫煙者においてのみ統計学的に有意であった。
今回の研究により、果物摂取と膵がん罹患リスク低下に関連が認められた。膵がんのリスク低下には、果物に含まれるビタミンなどの抗酸化成分が関係していると考えられるという。一方で、野菜摂取は、リスク増加との関連が認められたものの、喫煙者でリスクの増加が顕著になることから、野菜とタバコに含まれる成分との相互作用の可能性が考えられたが、明確な理由は明らかになっていないとしている。
今回の研究は、日本人において、これまででは最大規模であるが、症例数が必ずしも多くなかったため、偶然の結果の可能性も否定できないという。日本人を含むアジアにおける疫学研究が少ないため、今後はさらなる研究の蓄積が必要だ、と研究グループは述べている。