■分類は「かかりつけ」「高度薬学」
厚生労働省は18日、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会に、薬機法改正に向け、法令上明確にすべき論点として、薬局の基本的な機能に「医薬品の服用期間を通じた服薬状況の把握や薬学的な知見に基づく指導」や、「必要に応じた処方医への情報提供」を加えることなど、薬局が有する機能を明確化することを挙げた。薬剤師・薬局が服薬状況の継続的な把握などの業務に取り組むことを義務化する方向性について異論は出なかったが、一部の委員は、「法令上明確にしないとできないことなのか」「ガイドラインや通知で良いのでは」などと主張し、法制化に慎重な姿勢を示した。
厚労省は、この日の会議に提示した資料で、有効で安全な薬物療法の提供には、患者の服薬状況を継続的に把握し、その情報を処方医等に情報提供を行うことが必要になるが、「薬局の薬剤師はこれを必ずしも十分実施できているとは言えない実態がある」と指摘。薬局の担うべき基本的な機能として、▽調剤時のみならず、医薬品の服用期間を通じて、服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を行う▽患者の服薬状況等に関する情報を必要に応じて処方医等へ提供するよう努めることにより、薬物療法の最適化に寄与する――ことを提案した。
また、患者が自ら薬局を選択しやすくするため、薬局の基本的な機能に加え、「地域で在宅医療への対応や入退院時をはじめとする他の医療機関、薬局などとの服薬情報の一元的・継続的な情報連携において主体的な役割を担う」(かかりつけ)機能を有しているのか、「癌などの薬物療法を受けている患者に対し、医療機関との密な連携を行いつつ、高い専門性に基づき、より丁寧な薬学的管理や特殊な調剤に対応できる」(高度薬学管理)機能を有する薬局なのかを明確にすることも提案した。
山口育子委員(認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「法令上明確にすることで本来業務が明確になる」ほか、「自浄作用を待っていてもダメ」なことから、服薬状況の継続的な把握などの業務を法制化する方向性を支持した。
また、薬局の中には、かかりつけ機能をしっかり持っている個店もあれば、調剤と相談に乗る程度しかできていない個店、チェーン傘下であってもきちんとかかりつけ機能を果たしている薬局もあるため、「どういう薬局なのか見えるようにしていくことが必要」との考えを示した。
伊藤由希子委員(津田塾大学総合政策学部教授)も、薬剤師・薬局がやらなければならない業務を法制化し、明確にすることは「意味のあること」とし、「ダメな薬局を淘汰するための条件整理にもなる」と同調した。
これに対し中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「なぜ法令上明確にしないとできないのか。本来業務がしっかりとできていないのに、さらに上を目指して法令化するということに非常に違和感を覚える」と指摘。「次の診療報酬改定での調剤技術料の新しい項目が目に浮かぶ」とし、関係法令での明確化に反対する姿勢を示した。
乾英夫委員(日本薬剤師会副会長)は、薬局・薬剤師への意見を真摯に受け止めるとし、薬局の機能区分として、最低限の機能を「基本的な薬局」「かかりつけ薬局」「高度薬学管理機能薬局」の3類型を示し、法令上で役割を明確化することを求めた。
ただ、山口氏は、「最低限しかやっていない薬局を基本的機能とするのは、今までと変わらない。最低限しかやっていない薬局がそれだけで経営していける仕組み自体が問題」と指摘した。