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SGLT2阻害薬による腎保護効果は尿細管が標的か-旭川医大ら

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2018年10月19日 PM12:45

患者の30%が患う糖尿病腎症とSGLT2阻害薬の腎保護効果

旭川医科大学は10月17日、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬による腎保護効果は、尿細管を標的としたものであることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大内科学講座(病態代謝内科学分野)の滝山由美准教授、名古屋工業大学大学院工学研究科の中村匡徳教授、九州大学工学研究院の世良俊博准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cell」と「Lancet」の共同オープンアクセス誌「EBioMedicine」に掲載されている。

日本国内の糖尿病患者は現在1000万人とされ、そのうちの30%が合併症である糖尿病腎症を患う。2016年の報告では、人工透析を始めた人の43.2%が糖尿病で、同年には1万7,000人の糖尿病患者が人工透析となった。新規の糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬は、近年の大規模臨床試験の結果、糖尿病患者において、腎症の進行を抑えることがわかっている。

腎臓の糸球体は、体内の老廃物を濾過する重要な働きをしており、ヒトの腎臓にはひとつあたり約100万個の糸球体がある。糸球体の大きさは、100ミクロン程と小さいため、現在の画像検査では観察は不可能であり、生体検査によって組織を採取し、初めて観察が可能となる。しかし、その場合、糸球体10個程度が限界だった。そのため、糸球体の数と大きさが、糖尿病ではどうなっているのかを知ることは、糖尿病の治療と腎症の進行度を予測する上で重要だという。

SPring-8の放射光で糸球体を可視化

今回、研究グループは、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能大型放射光施設「」を用いた研究を実施。SPring-8の放射光を用いれば、糸球体の可視化が可能ではないかという仮説のもと、肥満2型糖尿病モデルマウスを用いた撮影方法・解析方法の開発を行った。

その結果、糖尿病マウスの糸球体は、正常マウスと比べると、その数は変わっていなかったものの、大きくなっていた。また、SGLT2阻害薬は、糖尿病による腎肥大を正常化したが、糸球体の数・大きさは変わらなかったという。一方、大きく変わったのは、腎臓の90%以上を占める尿細管の大きさだった(全糸球体体積は、腎体積の1.5%未満)。これらの結果から、SGLT2阻害薬の腎保護効果は、尿細管を標的としていることが明らかとなったとしている。


画像はリリースより

今回、SPring-8の放射光を用いたマイクロCTにより、マウス全身の血管撮影と解析が可能となった。現在、研究グループは、糖尿病と合併の多い脂肪肝、糖尿病患者の死亡原因の第1位であるがんについて、その血管構造の変化、異常血管新生の研究を進めている。今後は、糖尿病とその合併症の病態をミクロ単位で明らかにすることにより、ヒトでの糖尿病の病態の理解を進め、新しい治療法と診断法の開発を目指す、と研究グループは述べている。

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