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卵巣がんを早期検出可能な血液中マイクロRNA診断モデルを作成-国がん

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2018年10月19日 PM12:30

感度99%、特異度100%で卵巣がんを検出

国立がん研究センターは10月17日、早期診断が困難で予後の悪い卵巣がんについて、血液により高い精度(感度99%、特異度100%)で卵巣がんを検出する診断モデルの作成に成功したと発表した。この研究は、同研究所分子細胞治療研究分野の落谷孝広プロジェクトリーダー(現:東京医科大学医学総合研究所分子細胞治療部門教授)、横井暁特任研究員(現:MD Anderson Cancer Center博士研究員)、松崎潤太郎特任研究員らの研究グループによるもの。研究成果は「Nature Communications」に掲載された。


画像はリリースより

卵巣がんは、年間約1万人が罹患し、その半数の約5,000人が亡くなるとされている。卵巣は、骨盤内に位置することから、がん発生初期の段階では自覚症状に乏しく、早期診断が極めて困難で、発見時にはすでに転移を伴う進行症例が6割を超える。そのため、卵巣がんは早期発見が強く望まれるが、科学的に有効なスクリーニング方法は存在しない。初期の卵巣がんの多くが、産婦人科受診の経腟超音波検査や、他の画像検査の際に偶発的に発見されており、非侵襲的かつ簡便な早期診断方法の確立が課題となっている。

近年の研究より、がんなどの疾患にともなって患者の血液中でマイクロRNAの種類や量が変動することが明らかになっている。さらに、こうした血液中のマイクロRNA量は、抗がん剤の感受性の変化や転移、がんの消失など病態の変化に相関するため、新しい診断マーカーとして期待されている。

ステージI患者群でも95.1%の高い精度で陽性と診断

研究グループは、428例とその他のがん859例、がんを有さない2,759例の計4,046例における全例の血液(血清)中マイクロRNAを網羅的に解析し、卵巣がん患者で有意に変化する多くのマイクロRNAを同定し、それらの組み合わせを利用した統計的解析により卵巣がん患者を特異的に判別できる判別式(診断モデル)を作成した。

また、解析対象例を探索群と検証群の2つに分けてその精度を検証した結果、同モデルは卵巣がん患者全体の98.8%を正しくがんであると判別することができ、診断精度の極めて高い(感度99%、特異度100%)診断モデルの作成に成功したことを確認した。ステージ別の検証では、ステージII~IVの患者群を100%陽性と診断でき、ステージIの患者群においても95.1%の高い精度で陽性と診断することができたという。

今回の研究により作成された診断モデルは、過去に類を見ない、極めて高い診断精度で、かつその精度を血液からの情報のみで実現できたことは大変意義の大きい成果だとしている。研究成果を今後、前向きの臨床研究でさらに検証および最適化を重ねることで、卵巣がん検診確立の実現に向けて大きな前進が強く期待できるという。血液検査による卵巣がん検診の確立は、卵巣がん診療にパラダイムシフトをもたらす試金石となり得るもので、その実現に向けて今後も研究を継続する、と研究グループは述べている。

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