乳がんの原因とされる11遺伝子を解析
理化学研究所は10月15日、乳がんの原因とされる11の遺伝子について、世界最大規模となる合計1万8,000人以上のDNAを解析し、日本人遺伝性乳がんの「病的バリアント」データベースを構築したと発表した。この研究は、理研生命医科学研究センター基盤技術開発研究チームの桃沢幸秀チームリーダー、統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長(研究当時)らの国際共同研究グループによるもの。研究成果は、英科学雑誌「Nature Communications」オンライン版にて公開された。
画像はリリースより
乳がんは、日本人女性で最も患者数の多いがんであり、そのうち5~10%の患者はひとつの病的バリアントが原因になると推定されている。乳がんでは、BRCA1、BRCA2など11個の原因遺伝子が知られており、遺伝子検査により、乳がん患者が病的バリアントを持つことがわかれば、より適切な治療が可能になると考えられている。
しかし、病的バリアントは人種によって大きく異なるため、日本人独自のデータベースの構築が求められていた。
サマリー情報は国内外の公的DBにも登録・活用予定
今回、研究グループは11の原因遺伝子について、バイオバンク・ジャパンにより収集された日本人の乳がん患者群7,051人および対照群1万1,241人のDNAを、独自に開発したゲノム解析手法を用いて解析。その結果、同定できた遺伝子バリアント1,781個中244個(約13.7%)が病的バリアントであることが判明した。さらに、日本人に多い病的バリアントや遺伝子ごとの乳がんのリスク、病的バリアントを持つ人の臨床的特徴なども明らかにしたという。
これらの解析結果は、病的バリアントデータベースとして構築されており、今後、そのサマリー情報は国内外の公的データベースにも登録、活用される予定。今回の研究成果について、研究グループは、「他の種類のがんについても同様の手法を用いて大規模解析を行っていくことで、その他のがんについても患者一人一人にあったゲノム医療が可能となると期待できる」と述べている。
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・理化学研究所 プレスリリース