抗菌作用以外の有用作用や細菌毒の活用を目的に
新潟大学は10月12日、新薬開発に向け、北里大学と共同研究契約を締結したと発表した。新潟大学は医歯学総合研究科歯学系の寺尾豊研究室が、北里大学は生命科学研究所の砂塚敏明研究室(スペシャルコーディネーター:大村智特別栄誉教授・ノーベル賞)が代表となり、新たな免疫調節剤や抗炎症剤などの創薬研究を推進する。
画像はリリースより
日本政府は、抗生物質の使用削減を含めた「AMR(薬剤耐性)アクションプラン」を制定している。特に、経口マクロライド系抗生物質は国内使用量が多く、政府は2020年までにその使用量を半減させる目標を掲げている。新潟大学の寺尾研究室では、肺炎球菌のマクロライド耐性率が80%以上であることを明らかにし、警告している。一方で、経口マクロライド系抗生物質が多用されるのは、その治療効果が広範に渡り、かつ有効であるからにほかならない。現在、抗菌以外の有効作用のメカニズム解析も進んでおり、寺尾研究室では、マクロライド系抗生物質がその耐性菌に対しても毒素産生等の病原性を低下させることを報告している。
骨の免疫異常疾患の治療薬開発も
研究グループは、抗生物質に頼らない新規治療法や予防法の開発と創薬化を進めつつ、大学間の医歯薬学融合研究を展開する。マクロライド系抗生物質研究の先駆者であり、かつ有機化学合成の専門家である北里大学の砂塚教授と大村特別栄誉教授が、マクロライド誘導体の分子設計と合成を担当し、肺炎や歯周病研究の専門家である新潟大学の寺尾教授らが、マクロライド誘導体の治療効果を分子レベルで評価する計画となっている。
この共同研究契約で目指す創薬のポイントは、さまざまな薬理作用を有するマクロライド系抗生物質から抗菌作用を無くした改変化合物を合成することで、耐性菌を発生させないこと。また、抗菌作用を除去する一方で、細菌毒素を抑制する作用や、免疫系を最適な状態に調整する作用を残すことで、肺炎などを治癒させやすくすることを目指す。さらに、歯周病やリウマチなどの骨の免疫異常疾患の治療薬開発も目指すとしている。
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