2波長の光超音波画像と超音波画像を同時撮影
東北大学は10月12日、2波長の光超音波画像と超音波画像を同時に撮影できる、皮膚の「in vivoイメージング技術」の開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医工学研究科の西條芳文教授、株式会社アドバンテスト新企画商品開発室統括リーダーの増田則之氏らの研究開発グループが、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)のひとつである「イノベーティブな可視化技術による新成長産業の創出」の一環として行ったもの。
画像はリリースより
同プログラムでは、光超音波技術を利用した新たな生体の画像化技術の開発に取り組んでいる。その中で皮膚浅部の血管網を高解像度で画像化することを目的とし、顕微鏡レベルの解像度を30μm以下にするマイクロ可視化システムの研究開発を行っている。
光超音波イメージングは、血液やメラニンなど光に吸収特性のある物質を選択的に画像化することができるが、1波長の光源ではメラニンと血管、動脈と静脈などの判別ができず、得られる情報が限定的だった。また、皮膚の構造が画像化できないため、皮膚の表面や皮膚の厚みはわからず、光超音波画像だけでは血管やメラニンの位置を特定することができなかった。
これらの課題を解決する方法として、多波長での光超音波イメージングと超音波画像を重ねることが挙げられるが、in vivoイメージングに応用するには高速で測定可能なシステムが必要となる。そのため研究グループは、2波長の光超音波画像と超音波画像を同時に取得可能な、マイクロ可視化システムの開発に取り組んでいる。
新たな研究開発ツール・診断装置としての可能性に期待
今回、研究グループは、高解像度の光超音波イメージング方式として、集束型の超音波センサで走査する方式を採用。集束型の超音波センサにすることで、血管などから発生する超音波を超音波センサ面に集束させて光超音波画像を取得でき、同センサから超音波を集光して送信し反射した超音波を受信することで超音波画像を取得することが可能となった。また、レーザ光を照射する光学系と超音波センサを一体化することで小型化し、複雑な形状の顔皮膚に超音波センサを近づけることが可能となったという。
同システムでは、専用の波長光源、超音波センサ、XYステージを開発し、専用ボードで制御することで計測時間を短縮、深度2mm、6mm角を15μmステップで走査し約4分で測定できるようになった。2波長光源は、532nmと556nmのパルス光を交互に照射可能で、得られた光超音波信号の差分から酸素飽和度を求めることができる。また、超音波画像を光超音波画像と重ねることで、皮膚表面からの血管の深さ情報や、毛穴、皮脂腺などとの相関を調べることも可能となる。
目または皮膚に対するレーザの安全基準としては、最大許容露光量(MPE)が規定されているが、同システムは皮膚のMPEを満たしており、顔の皮膚などのin vivoイメージングが可能。従来得られなかった皮膚血管網の酸素飽和度情報を光超音波画像と合わせて画像化することで、皮膚に関する新たな研究開発ツールや診断装置としての可能性が期待される。研究グループは今後、「酸素飽和度計測の有効性について研究を進め、システムの実用化を目指す」述べている。
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