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赤痢アメーバが腸管病原性大腸菌を利用して酸化ストレスに抵抗-群馬大ら

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2018年10月16日 AM11:15

赤痢アメーバの酸化ストレス防御応答の分子メカニズム

群馬大学は10月12日、赤痢アメーバが腸管病原性大腸菌を利用して酸化ストレスに抵抗し、宿主体内で増殖していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科生体防御学分野の下川周子助教、国立感染症研究所寄生動物部の久枝一部長、イスラエル工科大学のSerge Ankri(サージ アンクリ)博士らの研究グループによるもの。研究成果は「PLoS Pathogen」への掲載に先立ち、オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

これまでにSerge Ankri博士らは、腸管病原性大腸菌が赤痢アメーバの酸化ストレスに対する抵抗性に貢献することを見出していた。そして今回、下川助教らと共に、赤痢アメーバの大腸感染モデルを用いて、腸管病原性大腸菌による赤痢アメーバの酸化ストレス防御応答の分子メカニズムを明らかにした。

リンゴ酸脱水素酵素とオキサロ酢酸を利用し寄生効率高める

今回の研究では、まず試験管内で腸管病原性大腸菌(O55)と赤痢アメーバを共培養し、その後、酸化ストレスを与えた時の赤痢アメーバ側の酸化タンパク質を網羅的に解析。その結果、腸管病原性大腸菌(O55)と共培養した赤痢アメーバでは、酸化還元に関わるタンパク質にのみ酸化が認められたが、単独で培養した赤痢アメーバでは、それらに加え、脂質・炭水化物代謝に関わるタンパク質も酸化されていた。この結果から、腸管病原性大腸菌(O55)が存在すると赤痢アメーバが生存するために重要となるタンパク質の酸化が促進されず、保護されていることが判明した。

さらに、腸管病原性大腸菌(O55)との共培養の際、いくつかの大腸菌タンパク質も酸化されており、その中の1つ、:malatedehydrogenase)に赤痢アメーバの酸化ストレスに対する保護作用があることを明らかにした。また、この酵素によってリンゴ酸から生じるオキサロ酢酸にも同様の効果があることが判明した。

研究グループは、これらの結果を実際の感染の場であるマウスの大腸でも検証。マウスに赤痢アメーバを感染させる際、オキサロ酢酸を加えた場合と加えない場合とで、腸管内赤痢アメーバの数を比較したところ、オキサロ酢酸とともに感染させたマウスにおいて、赤痢アメーバの数が多く認められた。これらの結果から、赤痢アメーバは腸管病原性大腸菌(O55)が産生する酵素、その産物のオキサロ酢酸を利用し、自らの寄生効率を上げていることを世界で初めて証明したとしている。

今回の研究成果を受け、研究グループは、「今後、赤痢アメーバのストレス応答メカニズムやオキサロ酢酸の防御効果を詳細に解析し、阻害する戦略を明らかにすることで赤痢アメーバ症の新規治療薬の開発につながると確信している」と述べている。

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