脳由来神経栄養因子とよばれる分泌性タンパク質の一種
国立循環器病研究センターは10月10日、発芽玄米に含まれる健康成分を増加させる製造方法を開発し、独自のマウスモデルを用いた実験で、その発芽玄米を継続摂取することで脳内物質「BDNF」の産生が増強されることを確認したと発表した。この研究は、同研究所分子病態部の柳本広二疾患分子研究室長の研究グループと、SBIホールディングス株式会社との共同研究によるもの。
画像はリリースより
BDNFは、脳由来神経栄養因子とよばれる分泌性タンパク質の一種。脳内BDNFの適度の産生増加は、虚血性脳卒中への抵抗性や記憶力を高め、うつ症状を軽減させることがわかっており、脳血管疾患や認知症の予防に活用できると考えられている。
BDNFは、「適度で自発的、持続的な身体活動」や「適度で持続的なカロリーの摂取制限」によって増加する。しかし、誰もが運動や食事制限を続けられるとは限らないため、安全かつ誰もが取り入れることができる、新たなアプローチによるBDNF増加手段の開発が求められている。
脳内BDNF量増をモデルマウスで確認
玄米の発芽過程では、適切な温度と水が必要となる。研究グループは、新製造法に基づき5-アミノレブリン酸(ALA)を適切に用いることで、発芽玄米に含まれるガンマ-アミノ酪酸(GABA(ギャバ))が通常(既存)の発芽と比べて有意に増加することを明らかにしたという。また、玄米が発芽するとギャバ量が約3~4倍に増加するが、劣悪な発芽環境や不十分な発芽時間ではほとんど増加しない。既存の発芽手法に勝る発芽後ギャバ量の増加は、順調な発芽反応が一定時間内に十分に進んだこと(玄米のより健全な発芽)を示すという。同研究では、玄米の発芽過程でALAを適切に用いることで、より良質な発芽反応が生じることが明らかとなったとしている。
さらに、マウスをマウス用通常食群、同発芽玄米群、従来の発芽玄米(無作為に3種を抽出)群に分け、6週間にわたり飼料として与えた後に、独自の修正を加えたモリスの水迷路試験を実施。個々のマウスの空間認知学習力を判定した。その結果、マウス用通常食で飼育されたマウス群に比べて同発芽玄米で飼育されたマウスの成績が有意に高く、同発芽玄米によりマウスの記憶力が向上したことが示されたという。また、マウスに対してマウス用通常食または同発芽玄米のいずれかの処置後に、ELISA法を用い、脳内BDNF量を測定。その結果、同発芽玄米群のBDNF量が、マウス用通常食群と比較して有意に高いことが示されたとしている。
今回の研究結果は、あくまでもマウスを用いたものであり、人での有効性が確認されたわけではない。また、マウスを用いた実験系で見る限り、従来の発芽玄米の品質は決して一定ではなく、発芽玄米であれば身体によいとは一概には言えず、比較した従来の発芽玄米群のうち、一部の(既存)製品では、脳内のBDNFを減少させ、記憶力を低下させる、というマイナス効果が示された。今後は、脳内BDNF量の増減に関連する機能性の、人での検証が求められるとしている。なお、同発芽玄米は、商品名「発芽玄米の底力」として、10月11日より、SBIグループのSBIアラプロモ株式会社からの販売が予定されている。
▼関連リンク
・国立循環器病研究センター プレスリリース