厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会は10日、近く登場が予想されるCAR-T細胞治療薬など、高額な新薬の保険収載の考え方をめぐり改めて議論した。6月に閣議決定された骨太方針に費用対効果等の経済性評価、保険外併用療養の活用の検討が明記されたことを受けたもの。委員からは「保険適用外とすることで製薬企業の開発意欲が削がれるのは問題」とイノベーションへの悪影響を懸念する声が相次いだ。
既に4月の部会でも高額薬剤への対応を議論し、保険適用外とする取り扱いに反対意見が相次ぎ、皆保険制度を堅持しながら費用対効果評価の導入などの努力をしていく方向で意見の一致を見ていたが、この日の議論でも高額薬剤を保険適用外とすることには「製薬企業の開発意欲を削ぐ」と反対意見が相次いだ。
森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、国民に必要な医薬品へのアクセスを確保すべきとし、「保険適用外にすると公的保険の意味がなくなる」と指摘。製薬企業にとっても「開発した新薬が保険収載されなければ開発意欲を削ぐ」とイノベーションに悪影響を与えると懸念を示した。
安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も「新薬開発意欲を削ぐ仕組みは良くない」と反対を表明。「真に保険収載を検討すべき医薬品は何かを考えたメリハリある仕組みとすべき」と主張した。
菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)は、「画期的新薬の市場が大きくなると薬価が下がる仕組みは開発意欲を削ぐ」と指摘。保険政策だけで産業振興も行うのは苦しいとし、「保険政策のみでなく、画期的新薬を開発した企業には法人税の減免を受けられるなどの仕組みが必要」と提言した。