統合失調症の発症にかなりの割合で関与する遺伝的要因
藤田保健衛生大学は10月3日、日本最大の全ゲノム解析により、統合失調症の新規リスク遺伝子同定に成功したと発表した。この研究は、同大医学部精神神経科学の池田匡志准教授、岩田仲生教授、理化学研究所統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長(当時)、国立循環器病研究センターの高橋篤部長、京都大学の鎌谷洋一郎准教授らによるもの。全国18の大学・施設・研究チームと共同で行われた。研究成果は、「Schizophrenia Bulletin」オンライン版で公開されている。
画像はリリースより
統合失調症の有病率は、どの民族でもおおよそ100人に1人といわれている。現在は抗精神病薬を用いた薬物療法が主体だが、再発率が高いなど、根本的治療とはいえない状況が続いている。これまでの双生児研究・家計研究などの結果から、発症には遺伝的要因がかなりの割合で関与することがわかっているものの、詳細な原因は不明であり、早急な原因・リスクの解明とそれに基づく根本的治療の開発が望まれている。
統合失調症と双極性障害には民族を超えた遺伝的共通性が
研究グループは、統合失調症のリスク遺伝子同定を目的に、過去最大規模となる約2,000人の統合失調症サンプルと、約7,000人の対照者(全て日本人)を用いた全ゲノム関連解析を実施。さらに独立した追試サンプルとして約4,000人の統合失調症サンプルと、5万人を超える対照者を用いて、全ゲノム関連解析の結果の確認を行った。
その結果、3領域で統合失調症との有意な関連を同定。この領域との関連は、既報にないため、新規のリスク遺伝子として同定したという。また、今回の研究では、白人を中心とした統合失調症全ゲノム関連解析の結果を結合した解析も実施し、12個の新規リスクも同定。この結果を利用し、遺伝的共通性を日本人-白人統合失調症で検出することができたという。さらに、統合失調症の近縁精神疾患である双極性障害と、民族を超えた遺伝的共通性を見出した一方で、うつ病との共通性は見出すことはできなかったとしている。
今回の研究により、新規遺伝子領域を含む複数の統合失調症リスク遺伝子が同定された。しかし、個々の遺伝子が統合失調症に及ぼす効果の大きさは極めて小さく、すぐに診断に実用できたりするものではない。研究グループは、「これらの関連遺伝子を詳細に調べることで、統合失調症が発症する一因を解明することが期待できる」と述べている。
▼関連リンク
・藤田保健衛生大学 研究発表