■高まる薬剤師の安全意識
日本医療機能評価機構は2日、2017年の薬局ヒヤリ・ハット事例をまとめた集計結果を公表した。昨年の薬局におけるヒヤリ・ハット事例の報告件数は6084件。そのうち、医療機関で発生した処方の誤りを薬局で発見した疑義照会関連の事例が前年から約900件増の2234件と過去最多となった。ヒヤリ・ハット事例全体に占める割合も36.7%と前年から9.2%の大幅な高まりを見せ、初めて3割を超えた。同機構は、疑義照会関連事例の増加理由について、「患者のための薬局ビジョンなどを通じて、薬剤師の安全に対する意識が年々高まっているのではないか」と分析している。
17年に報告されたヒヤリ・ハット事例を見ると、調剤関連が前年と比べて262件増の3823件(62.8%)で最多となった。内訳を見ると、数量間違いが1010件、薬剤取り違えが853件、規格・剤形間違いが728件の順に多かった。
疑義照会関連は2234件(36.7%)で、前年より875件増加し、09年の調査開始以来初めて3割を超えた。件数も過去最多となり、薬剤師が水際で副作用を防ぐ事例の増加が続いていることがうかがえた。同機構は、疑義照会関連の増加理由について、「患者のための薬局ビジョンや日本薬剤師会の取り組みなどを通じて、薬剤師の安全に対する意識が年々高まっているのではないか」との見解を示している。
18年度調剤報酬改定では、施設基準として医療安全に関する取り組みの実績を求める「地域支援体制加算」が新設されており、こうした制度改正が今後ヒヤリ・ハット事例のさらなる報告増につながる可能性もありそうだ。
疑義照会に関する項目では、仮に変更前の処方の通りに服用した場合、患者に健康被害があったと推測される事例が1508件(67.5%)、患者に健康被害が生じなかったが医師の意図した薬効が得られなかったと推測される事例が726件(32.5%)だった。変更内容については、薬剤変更が671件、薬剤削除が595件、分量変更が526件の順で、前年から分量を変更した事例の増加傾向が続いている。
一般名処方に関するヒヤリ・ハット事例を分析したところでは、昨年報告された6084件のうち723件と、前年より300件以上増加した。全体に占める割合は11.9%で、初めて1割を上回った。調剤に関する事例は539件で前年より232件増加し、疑義照会に関する事例は184件で78件増加した。
一般名処方に関するヒヤリ・ハット事例は、16年から増加率が年々高まっており、後発品の使用促進策が加速する中で、一般名処方をめぐるヒヤリ・ハット事例も増加していることがうかがえた。
一方、17年に医療機関から報告された医療事故情報の年報のうち、疑義照会に関する事例を分析した結果も公表された。14年1月~17年6月までに発生した医療事故のうち、院内処方について疑義照会を行うべきところを行わなかった(疑義照会なし)事例が32件、疑義照会を行ったが処方・指示が修正されなかった事例(疑義照会あり)が6件の計38件だった。院外処方については、疑義照会なし17件、疑義照会あり1件の計18件だった。
院内処方と院外処方を合わせた疑義照会なし事例50件の内訳を見ると、薬剤量間違い(過剰・過少)が29件、相互作用(併用禁忌・併用注意)7件、日数間違い5件、薬剤間違い3件の順だった。