10カ年戦略では、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症などの6疾患を中心に、全身的反応に関わる疾患と何らかの免疫反応が関与する疾患を対象に、日本の独自性と優位性を最大限に生かした研究を進めることの重要性を強調。発症・重症化予防によるQOL改善、防ぎ得る死の根絶、疾患活動性の「見える化」、層別化医療の実現を10年後のビジョン打ち出し、そのために免疫アレルギーの本態解明、社会の構築、疾患特性に関する三つの研究戦略が必要と明記した。
その中で、本態解明に関する基礎研究については、海外に比べて比較的均一な遺伝学的背景を持つなど、多因子疾患の遺伝学的解析を含めた網羅的解析に有利なことが層別化医療を実践していく上で日本の強みになると指摘。遺伝学的、分子生物学的な解析を行い、詳しい病態を含めて総合的に患者を層別化し、最適な医療を導入する取り組みを通じ、免疫アレルギー応答を見える化していくことが必要とした。
これらの層別化医療を進めるため、患者登録データベースの標準化やそれに向けた各疾患の経過、治療反応性、副作用などの収集情報項目の整理、言語の統一化が必要とし、さらにバイオバンクの整備を求めている。
社会の構築に関する研究では、国民の貢献を重視した研究開発の仕組み作りを行い、患者が参画する研究成果の社会還元を目標に打ち出した。そのため、一つには臨床試験への患者・市民参画の推進に取り組む。人権保護や研究の質向上の観点から、患者の意見を取り入れながら臨床試験デザインを構築することが求められる時代になってきたとの認識を示し、わが国でも患者が臨床試験に主体的に参画する上で何が必要なのか検討を行う必要性を明記した。その上で、疾患経過、治療効果に関する患者の全国調査などを行い、介入を伴う臨床試験デザイン、実施、報告書作成に患者の参加を進めることを求めた。
さらに、疾患特性に関する研究により、一部の重症疾患における防ぎ得る死をゼロにすることを目標に打ち出し、小児の免疫アレルギー疾患研究や高齢者を含む成人発症免疫アレルギー研究、重症・難治性の免疫アレルギー疾患研究を進めていく方針を明示した。
現在開発が進められている抗体医薬にも言及。医療費の観点からも効果判定可能な予測方法の確立や重症例に複数の抗体医薬を併用するランダム化比較試験を実施し、適切な患者に投与されるようにすることが必要とした。
長期にわたる10カ年戦略については、研究の進捗状況や全体像、国民のニーズを正確に把握するため、中間評価と見直しを行うことで持続性を担保することが必要としている。