ジギトキシンやジゴキシンといった強心配糖体に着目
富山大学は9月18日、心不全治療薬として使用されている強心配糖体の抗がんメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学薬学研究部(薬学)薬物生理学研究室の藤井拓人助教、酒井秀紀教授(薬学部長)らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「BBA-Molecular Basis of Disease」電子版に掲載された。
画像はリリースより
これまでの疫学的研究において、ジギトキシンやジゴキシンといった強心配糖体を服用している心不全患者ががんを発症した場合、がんの悪性度が低いこと、がんの再発率が低下すること、患者の5年生存率が高くなることなどが確認されていた。そのため、世界的に強心配糖体の抗がん作用に関連する多くの研究が行われてきたが、強心配糖体の抗がんメカニズムについては未解明なままだった。
がん細胞に特異的な膜輸送タンパク質複合体が存在
今回、研究グループは、がん細胞の細胞膜の特別な微小領域(膜マイクロドメイン)に、がん細胞に特異的な膜輸送タンパク質複合体が存在していることを発見。強心配糖体が、この複合体の受容体型ナトリウムポンプに結合し、細胞容積調節アニオンチャネルを異常に活性化させ、抗がんシグナルを発生することを突き止めたという。このようなメカニズムは、通常の細胞には存在しないことも確認されたとしている。
今後、膜輸送タンパク質複合体をターゲットにした創薬研究を進めることで、がん細胞に選択的な新たな治療薬の開発につながる可能性がある、と研究グループは述べている。
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