重症喘息患者の約50%で血中好酸球値が高い傾向
アストラゼネカ株式会社は9月20日、好酸球性の重症喘息患者を対象とする長期第3相BORA試験において、「ファセンラ」(一般名:ベンラリズマブ(遺伝子組換え))が一貫した安全性および持続的な有効性を示したと発表した。試験データは、フランス・パリで開催された2018年欧州呼吸器学会(ERS)国際会議での最新の口頭セッションにおいて発表された。
同剤は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性により、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)が、血中、気道の好酸球を直接的かつ速やかに除去するモノクローナル抗体。第1相試験により、血中好酸球が24時間以内に速やかに除去されることが確認されている。また、気道組織中、喀痰中の好酸球も除去することも確認された。
好酸球は人体の免疫システムのひとつである白血球の一種で、重症喘息患者の約50%で血中好酸球値が高い傾向がある。血中好酸球値が高くなると、気道炎症および気道過敏性を引き起こし、喘息症状の重症化、呼吸機能の低下や、喘息増悪リスクが上昇するとされている。
有効性評価項目の改善を2年目でも確認
BORA試験は、同剤を重症喘息の追加の維持療法として長期投与する場合の安全性および有効性を評価する試験。先行の主要第3相試験SIROCCO試験、CALIMA試験のいずれかを完了した好酸球性の重症喘息患者を対象にしている。
今回の試験で同剤を56週間追加投与した結果、安全性および忍容性はプラセボ対照試験であるSIROCCO試験およびCALIMA試験で得られた結果と同様で、有害事象全体または重篤な有害事象の発生頻度は増加しなかった。またSIROCCO試験とCALIMA試験で確認されたファセンラの有効性評価項目の改善は、2年目の追跡調査期間中においても同様に確認。SIROCCO試験またはCALIMA試験でのプラセボ投与群で、その後、BORA試験で同剤を投与された患者は、先行試験で同剤を投与された患者と同様の改善効果が認められたという。
これらの3つの試験において同剤を8週ごとに投与され、ベースライン時の血中好酸球数が300/μL以上の患者(第3相試験における主要な有効性評価集団)の74%は、投与2年目のBORA試験実施期間中に喘息増悪を起こさず、呼吸機能および喘息コントロールの改善が維持された。また、同剤を8週ごとに投与され、ベースライン時の血中好酸球数が300/μL以上の患者のうち、投与1年目に喘息増悪を起こさなかった患者は、SIROCCO試験において65%、CALIMA試験において66%だった(プラセボ群ではともに49%)。
ファセンラは、米国、EU、日本、その他数か国において、重症喘息治療の追加療法として承認されており、数か国で承認申請中。固定用量があらかじめ充填されたプレフィルドシリンジの注射剤で、初回、4週後、8週後に皮下に注射し、以降、8週間隔で皮下に注射する 。また現在、重症の鼻ポリープ症に対する治療薬としても検証されている。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース