およそ3人に1人が生涯で何らかの不安症と診断
国立がん研究センターは9月15日、青魚などに含まれるオメガ3系脂肪酸の抗不安効果をメタアナリシスで検討した結果、オメガ3系脂肪酸の摂取により不安症状が軽減すること、また身体疾患や精神疾患などの臨床診断を抱えている場合にその効果が高いことを明らかにしたと発表した。この研究は、国がん社会と健康研究センターの松岡豊健康支援研究部長、中國醫藥大學醫學院生物醫學研究所の蘇冠賓教授(台湾)、文信診所の曾秉濤医師(台湾)らの共同研究グループによるもの。研究成果は「JAMA Network Open」に掲載された。
不安は最も一般的にみられる精神症状であり、約3人に1人が生涯において何らかの不安症と診断されている。不安は生活の質や社会機能を低下させ、全死亡率を上昇させることにつながる。がん患者においても、約半数のがんサバイバーが中等度以上の、7%が重度のがん再発不安を抱えていることがさまざまな研究で示されており、サバイバーシップにおける未だ満たされていないニーズのひとつだと指摘されている。
代表的なオメガ3系脂肪酸には、植物由来のアルファリノレン酸、海洋由来のエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸がある。近年、オメガ3系脂肪酸と不安の関連を調べる研究が多数行われ、オメガ3系脂肪酸の抗不安効果の検討が関心を集めている。
オメガ3系脂肪酸2,000mg摂取で抗不安効果
研究グループは、2018年3月4日までに公表された研究論文について、人を対象にオメガ3系脂肪酸の抗不安効果を評価した臨床試験で「ピアレビュー雑誌に出版されたもの」、「対照群はプラセボ使用の有無について問わない」、「研究参加者は、健常者、精神疾患患者、身体疾患患者」などの基準を設けて、臨床試験19件(合計2,240人)を選定。メタアナリシスで解析を行った。
その結果、オメガ3系脂肪酸を摂取した群はオメガ3系脂肪酸を摂取していない群と比較して、不安症状が軽減されることが判明(効果量0.374、95%信頼区間0.081-0.666)。また、層別化した解析の結果、身体疾患や精神疾患などの臨床診断を抱えている人を対象にした場合に抗不安効果が大きいことが示された。さらに、オメガ3系脂肪酸を少なくとも2,000mg摂取した場合に抗不安効果を認めることが示されたとしている。
画像はリリースより
今後は、オメガ3系脂肪酸の摂取量を2,000mg以上に設定し、身体疾患や精神疾患などの臨床診断を抱える人を対象にした大規模な臨床試験を実施することにで、オメガ3系脂肪酸による抗不安効果の検証が期待されるという。また、海洋由来のエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸、植物由来のアルファリノレン酸のいずれが、不安軽減に最も有効であるかを検討する研究が必要になる。さらに、がんサバイバーにおいても、がん再発不安と血中オメガ3系脂肪酸の関連を観察研究で確認することが必要だ。研究グループは、「二者の間に関連が認められることが分かった場合、がんサバイバーにおける最大の満たされないニーズであるがん再発不安軽減を目的にしたオメガ3系脂肪酸による臨床試験を計画し、科学的根拠に基づく機能性食品開発につながることが期待さされる」と述べている。
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・国立がん研究センター プレスリリース