卵巣がんの化学療法、薬剤耐性が課題
東北大学は9月14日、卵巣がんのプラチナ製剤のシスプラチン感受性に関与する新規タンパク質「TIE-1」を同定し、その作用機構を解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科婦人科学分野の八重樫伸生教授と、摂南大学薬学部の北谷和之講師のグループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」電子版に掲載された。
画像はリリースより
卵巣がんは、婦人科疾患のうち最も治療後の経過が悪い疾患であり、全女性の死亡原因では5番目に多いとされている。一般に、卵巣がんの治療にはシスプラチンなどのプラチナ製剤とタキサン製剤を併用した化学療法が行われているが、投薬を繰り返すと卵巣がんが薬剤耐性となり、治療成績が悪い原因となっている。よって、薬剤耐性卵巣がんに対する新規治療標的の探索や、抗がん剤耐性が生じる分子機構の解明が求められている。
TIE-1の働きを抑えるとシスプラチンの効果が増強
研究グループは、抗がん剤に耐性を持つヒト卵巣がん細胞を用いて、シスプラチンの効果を高める標的分子を、大規模遺伝子スクリーニング法により探索。その結果、治療標的分子の候補としてTIE-1タンパク質を同定した。TIE-1タンパク質は、これまで血管の新生や安定性に関与することが明らかにされていたが、抗がん剤の効果に対する関与は報告されていなかった。
今回、TIE-1タンパク質の働きを抑えるとシスプラチンの抗がん剤としての効果が増強されることが判明。また、TIE-1タンパク質の量が増加すると、卵巣がん細胞が抗がん剤耐性を獲得しやすくなることを見出したという。さらに、シスプラチンは、DNAと結合してDNA複製を阻害し、がん細胞の増殖を抑制するが、TIE-1タンパク質は、DNAに結合したシスプラチンを積極的に取り除くことで、シスプラチンの抗がん剤としての効果を抑えていることも明らかになったという。
今回の研究結果より、TIE-1タンパク質の働きを抑えることが卵巣がんの新たな治療戦略となる可能性があり、今後、卵巣がんの治療効果の改善が期待される。
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