発症原因の仮説の1つにRNA編集酵素「ADAR2」の活性低下
株式会社遺伝子治療研究所(GTRI)とアステラス製薬株式会社は9月14日、孤発性筋萎縮性側索硬化症(孤発性ALS)を対象とした遺伝子治療プログラムGT0001Xの開発および商業化に関する全世界における独占交渉のオプション契約を締結したと発表した。
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:ALS)は、運動ニューロンを選択的に障害し、手足、のど、舌の筋肉や、呼吸に必要な筋肉が次第に萎縮し、筋力が低下していく神経変性疾患。日本、アメリカ、EU5(イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア)での患者数は約5万5,000人と言われており、60歳以降の有病率は、人口10万人あたり20~30人にもおよぶ。その原因は不明であり、病勢の進行を止める有効な治療法が確立されておらず、日本では特定疾病に指定されている。また、ALS全体の9割以上を占める孤発性ALSでは、RNA編集酵素であるADAR2(adenosine deaminase acting on RNA 2)の活性低下が、発症原因の仮説の1つとして報告されている。
ADAR2遺伝子を組み込んだ改変型AAVベクターを開発中
GT0001Xは、改変型アデノ随伴ウイルス(改変型Adeno-Associated Virus:改変型AAV)ベクターにADAR2遺伝子を組み込んだ遺伝子治療用ベクター。脊髄運動神経のADAR2を除去した病態モデルマウスにおいて、ADAR2遺伝子を組み込んだ改変型AAVベクターの投与により、神経変性と運動機能障害の抑制が報告されている。現在、GTRIが孤発性ALSを対象として、同ベクターの開発を進めており、前臨床段階にある。今後、臨床での有効性と安全性を確認していくという。
AAVベクターを利用した遺伝子治療は、安全性が高く、特に神経変性疾患や先天性代謝疾患で効果が期待できるため、GTRIでも多くの適応症に対して開発を進めている。まずは根本治療の無い孤発性ALSを対象とした治験を実施し、難病に苦しむ患者のためにも開発を加速させていきたい、と同社は述べている。
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