匂い条件下と無臭条件下で色短期記憶課題を実施
九州大学は9月14日、柑橘系の果物に含まれる匂いが、オレンジ色を覚えにくくする効果があるという研究結果を発表した。この研究は、同大基幹教育院の田村かおり特任助教、岡本剛准教授、システム生命科学府一貫制博士5年濱川昌之大学院生らによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」オンライン版にて公開されている。
画像はリリースより
今回の実験では、柑橘系の果物に含まれる「デカナール」という匂い物質を使用。実験参加者は、この匂いがあるとき(匂い条件)と無いとき(無臭条件)の2つの条件で、オレンジ、ピンク、グリーン、ブルーに関する色短期記憶課題を実施。記憶想起時の脳波を計測し、脳活動の瞬間的な電気的変動を表す「事象関連電位P3成分」を解析した。
複数感覚の統合機構の解明につながる可能性も
その結果、匂い条件下で、無臭時と比べてオレンジ色に対する成績が下がることが明らかとなった。また、匂い条件下では、オレンジ色に対するP3が低い振幅を示すこともわかった。前頭部に出現するP3は、情報に対する注意と関連することが知られている。今回の研究の結果から、柑橘系に含まれる匂いを嗅いだとき、同じく柑橘と関連する「オレンジ色」への注意や記憶成績が抑制されることが示唆された。
今回の研究で得られた知見は、嗅覚情報が特定の視覚情報に影響を与える可能性を示唆しており、複数感覚の統合機構の解明に役立つことが期待される。今後は、匂いを使った効果的な広告や学習教材などの開発が可能になることも考えられる。
研究グループは、「実験前は、柑橘由来の匂いはオレンジ色の記憶を高めるはずだと予想していたが、見事に裏切られてしまった。安易に匂いをつけた広告は、逆効果になるかもしれない」と述べている。
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・九州大学 プレスリリース