がん診療連携拠点病院等の30万6,381件を対象に集計
国立がん研究センターは9月12日、全国のがん診療連携拠点病等から収集した院内がん情報を用いて、2011年の1年間にがんと診断された患者の3年生存率集計と、2008・2009年にがんと診断された患者の5年生存率集計の結果を公開した。
多くのがんでは、5年後の生存状況がひとつの治癒の目安として用いられている。そのため、国立がん研究センターでは診断から5年後の生存率を報告してきた。今回は、初めて5年生存率より早い段階の3年生存率集計を実施。胃、大腸、乳房、肝臓、肺の主要5部位に加え、食道、膵臓、前立腺、子宮頸部、子宮体部、膀胱の6部位を加えた11部位について、部位・病期別などに生存率を集計した。集計の対象は、がん診療連携拠点病院等30万6,381件、268施設だった。
全がんの3年実測生存率は66.3%、相対生存率は71.3%
集計の結果、施設全体での全がんの3年実測生存率は66.3%、相対生存率は71.3%だった。部位別の3年生存率では、膵臓がんの3年相対生存率が15.1%にとどまった。
画像はリリースより
また、5年生存率の集計は、3年生存率と同様の11部位について、50万1,569件251施設を対象に行われた。集計の結果、施設全体での全がんの5年実測生存率は58.5%、相対生存率は65.8%だった。性別の割合は男性が58%、女性が42%で、男性がやや多く含まれていた。診断時の年齢は、男女とも70歳代が最も多く、70・80歳以上を合わせると約47%を占めていた。
胃がんと大腸がんの5年相対生存率はそれぞれ71.1%と72.9%で、地域がん登録の集計値(2006~2008年診断例、胃がん64.6%、大腸がん71.1%)よりも若干高く、全国がんセンター協議会(全がん協)の5年相対生存率(2007~2009年、胃がん74.5%、大腸がん76.0%)よりも若干低い傾向が見られた。これは、施設により年齢・手術の有無・併存疾患の有無やその程度といった対象患者の背景が異なることや、集計方法による影響もあると考えられるためで、全体として生存率には大きな差はないとしている。
今回の集計では、集計対象数を確保するために2008年診断例と2009年診断例を合算し、部位別だけでなく病期別の集計も行った。しかし、都道府県別にみると対象施設に偏りがあり、また生存率は年齢、手術の有無、併存疾患の有無とその程度などにも大きく影響を受ける。そのため、同集計は各施設の医療の質を見直すきっかけとするものであり、都道府県・施設の治療成績を示すものではないとしている。
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・国立がん研究センター プレスリリース