抗菌・抗ウイルス活性を促進するインターフェロン
北海道大学は9月11日、自然免疫で中心的な役割を担うインターフェロン経路における記憶(インターフェロンメモリー)を発見し、その制御メカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大学大学院理学研究院の鎌田瑠泉助教・坂口和靖教授ら、米国国立衛生研究所(NIH)の尾里啓子博士らと、京都大学、横浜市立大学の研究グループによるもの。研究成果は、「PNAS」(米国科学アカデミー紀要)に掲載された。
画像はリリースより
インターフェロンにはI型インターフェロン(IFN-α/β)とII型インターフェロン(IFN-γ)が存在し、さまざまな細胞でインターフェロンに応答する遺伝子(ISG)を転写して抗菌・抗ウイルス活性を促進する。NIHの尾里博士らの研究グループは、以前からインターフェロン経路におけるヒストンバリアントH3.3の機能を解析してきた。これまでに、インターフェロン刺激に応答してインターフェロン応答遺伝子の転写が誘導される際に、遺伝子上にH3.3が取り込まれることを見出している。
自然免疫記憶を利用したワクチン開発などに期待
今回、研究グループは、哺乳類の細胞においてインターフェロン刺激により転写の記憶が形成され、2回目の刺激に対して遺伝子発現が素早くかつ強力に誘導されることを見出したという。また、今回発見された転写記憶では、記憶される遺伝子上に転写を担うRNAポリメラーゼIIや転写因子が素早く結合することが明らかになったとしている。
さらに、このインターフェロンメモリーは、DNAを核内へ収納する機能を持つタンパク質ヒストンの一種のヒストンバリアントH3.3と、ヒストンタンパク質H3の36番目のリシン残基(H3K36)の翻訳後修飾により制御されていることを初めて明らかにした。
これらの研究成果によって、獲得免疫とは異なる自然免疫記憶を、今回発見されたインターフェロンメモリーが担っていることが明らかとなった。自然免疫記憶の制御メカニズム解明により、難病・がん等の疾患に対するインターフェロンを用いた新しい治療法の開発や、自然免疫記憶を利用した効率的なワクチン開発への展開が期待できる、と研究グループは述べている。
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・北海道大学 プレスリリース