途上国の小児の主要な死亡原因である急性呼吸器感染症
東北大学は9月10日、特定のウイルスに罹患したのちに呼吸器感染症のリスクが高まることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科微生物学分野の押谷仁教授と京都大学ウイルス・再生医科学研究所の古瀬祐気特定助教らのグループが、フィリピン国熱帯医学研究所と共同で行ったもの。研究成果は「The Journal of Infectious Diseases」に掲載されている。
画像はリリースより
急性呼吸器感染症は、特に途上国の小児の主要な死亡原因のひとつとなっている。多くのウイルス・細菌などのなかでも、インフルエンザウイルスやRSウイルスなどが主要な原因で、ほとんどの小児は乳児期以降、これらのウイルスに繰り返し感染していることが知られている。
インフルエンザなどの感染で罹患リスクが1.3~1.6倍
今回の研究では、特定のウイルスに感染することにより、その後の呼吸器感染症のリスクが変化するのかを調査。フィリピンにおいて2014~2016年の間に約4,000人の小児を対象に、咳や呼吸困難など呼吸器症状を毎日記録し、さらに症状を呈した場合には、鼻咽頭ぬぐい液を採取し、遺伝子検査によってそこに存在するウイルスの種類を調べた。その後、特定のウイルスに罹患した小児を約1年間追跡し、そのウイルスに罹患しなかった小児と比べて呼吸器感染症に罹患しやすくなるのかをハザードモデルによって解析。その結果、アデノウイルス・インフルエンザウイルス(A型)・パラインフルエンザウイルス(4型)・ライノウイルス(C種)に感染した小児は、次の呼吸器感染症に罹患するリスクが1.3~1.6倍ほど高まることが明らかとなった。
今回の研究結果は、小児における呼吸器感染症のリスクを、これまでになかった視点から検討した重要な報告だ。どのような要因によって呼吸器感染症のリスクが高まるのかがわかれば、診療活動の一助となり、さらには医療資源の効果的な使い方やワクチン戦略などの対策へと、今後活かされていく可能性があると、研究グループは述べている。
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