4月に臨床研究法が施行され約半年が過ぎたが、医療現場では少しずつ影響が明らかになってきている。藤原康弘氏(国立がん研究センター企画戦略局長)は、「特定臨床研究を解釈するのがなかなか難しい」とした上で、抗癌剤治療における適応外使用が対象になっている問題点を指摘。具体的に、食道癌に対するシスプラチン+5FU併用療法でシスプラチンの用量が添付文書の記載用量より多い現状を挙げ、こうした抗癌剤を用いる多くの臨床試験が特定臨床研究扱いになることに危惧を示した。
医療機器の適応外問題は「さらに深刻」と警鐘を鳴らし、承認上の適応、用法と実臨床に大きな乖離があるとし、医療機器を用いたより良い治療の開発が著しく制限されることに懸念を示した。
一方、国忠聡氏(日本製薬工業協会医薬品評価委員会委員長)は、臨床研究法について「製薬企業としては特定臨床研究という枠ができたことは良かった」と前向きに評価。臨床研究の透明性向上や倫理性・科学性の担保などのメリットを挙げ、「臨床研究活性化のきっかけになるのではないか」と語った。
その上で、特定臨床研究の承認申請への活用に期待感を示し、条件付き早期承認の条件解除や早期臨床試験、ライフサイクルマネジメントの場面で特定臨床研究が活用できるのではないかと私見を述べ、「最初の適応を取る時は企業が治験をするが、適応追加や一部変更承認申請の場合は特定臨床研究を活用できるようになればありがたい」と期待感を示した。
ただ、藤原氏は「承認申請資料への活用は薬機法に記載されており、法改正しない限り当局は添付資料として認めないのでは」と疑問を呈した。臨床研究法を所管する厚労省医政局の伯野春彦研究開発振興課長も、「まだ法が施行されたばかりで、すぐに承認申請につながるものではないと思う。現時点では難しいのではないか」と否定的な見解を示した。