■税制、補助金に軸足移す戦略も
厚生労働省の鈴木俊彦事務次官は6日、就任後初めて専門紙と共同会見し、医薬品産業の振興について、「これまでは保険制度にもたれかかりすぎていた」と指摘。「保険の原理と産業振興は軸が違う」としつつ、「非常に大事な産業でしっかり振興していかなければいけないが、もう少し税制や補助金に軸足を向けて考える戦略もあっていい。保険一辺倒でなく総合的にどうパフォーマンスを高めていくか」との見解を披露し、「そういうことを視野に入れた医薬品産業のビジョンをぜひ作っていただきたい」と述べた。
鈴木次官は、医薬品産業の振興について「非常に大事な問題」としつつ、「これまでは保険制度にもたれかかりすぎていた」との認識を示した。最近では抗癌剤「オプジーボ」の緊急薬価改定をはじめ、高額薬剤の対応として相次ぐ薬価引き下げが行われたが、「たまたま直近2年間でそういう施策が選択されたということ。ずっと引き下げ続ける心配はないことは明確に申し上げていい」と約束した。
ただ、「今までと同じような組み立てで医薬品産業の振興を考えていいかというと、そうではない」と述べ、「国民は医薬品産業のために保険料を負担しているわけではなく、保険の原理と医薬品産業の振興は軸が違う」と指摘。「もう少し税制や補助金に軸足を向けて考える戦略もあっていいのではないか」との見解を示した。
その上で、「医薬品は日本の産業の中で非常に重要な産業であり、しっかり振興していかなければならない」と強調。「保険一辺倒ではなく、税制や補助金と組み合わせて総合的にどうパフォーマンスを高めていくか」と方向性を提示。「そういうことを視野に入れたこれからの医薬品産業のビジョンをぜひ作っていただきたい」と製薬業界にも要望した。
また、2040年に向けた社会保障のあり方を展望し、改めて「25年の次の国民と共有できる社会保障の絵柄をどう作るか、しっかり議論していかなければならない」と強調。「今までは給付と負担が大きな主要課題だったが、人口減少で医療・介護の担い手が少なくなる中、医療・介護は人手不足でサービスとして成り立つのか財源以前の問題が浮上してくる」と問題意識を示し、「そこを考えて健康寿命の延伸と生産性向上という新しい柱を組み入れ、国民に安心していただけるような社会保障の絵柄を描けるかどうかが目の前の課題だと思っている」と決意を新たにした。