福岡市薬は今年4月、会員の約710薬局に対して2017年1月から12月までの1年間に発行した服薬情報提供書の送付を依頼。現在、2大学と共同で、34薬局から収集した計234件の服薬情報提供書を対象に解析を進めている。
まずは服薬情報提供書に記載された情報の内容を分類。薬剤師が実際にどのような情報を、どんな割合で提供しているのかを数値化する。
さらに、この中から薬剤師が医師に処方変更を提案した症例を抽出。必要な情報を追加で収集した上で、詳しく解析する。情報提供前後の状況を詳細に把握し、薬剤師の提案がどれだけ医師に受け入れられたか、処方変更後に患者の状態がどう変化したのか、副作用や相互作用はどれだけ回避できたのかなどを分析。残薬や多剤併用(ポリファーマシー)の改善に伴う医療費削減効果も含めて、薬剤師の情報提供の有用性を明らかにする計画だ。
研究グループの中で主に解析を担当する島添隆雄氏(九州大学大学院薬学研究院准教授)は「薬剤師の提案によって処方がどう変わったかだけでなく、処方が変わった結果、どのようにアウトカムが変化したのかを細かく解析する。患者さんのリスクが減ったことも示したい」と語る。
現時点の解析では、服薬情報提供書を通じた薬剤師の処方提案は44人の患者に対して63件行われた。そのうち27人の患者に対する処方提案が医師に受け入れられた(受入率61.4%)。現在は、処方変更を提案した例を対象に、詳しい情報を追加で収集している段階だ。
福岡市薬の木原太郎副会長は「薬剤師自身が自分たちの職能や業務の有用性を立証する必要があると考え、研究のワーキンググループを立ち上げた」と話す。服薬情報提供書を活用してどの程度、どのような内容の情報提供が行われ、医薬品適正使用や医療費抑制にどのように貢献できているかはこれまで十分明らかになっていないため、その解析に取り組むことにしたという。
数年かけて研究を行うが、今年度中にひとまず解析結果を示して次回の調剤報酬改定に役立てたい考え。「国は、効果がないものには報酬を払わないという姿勢になっている。服薬情報提供書には現在、調剤報酬は発生しているものの、これだけの意義があるということを改めて数値で示しておかなければならない」と木原氏は強調する。
併行して服薬情報提供書の例文集作成も進める。どのような形式、文面で情報を提供すれば医師の理解を得やすいのか、その例文を今年度中に福岡市薬のウェブサイトに掲示する予定だ。それによって会員の薬剤師が服薬情報提供書を積極的に活用するよう後押しする。
服薬情報提供書は医師との連携を強化し、薬剤師が職能を発揮するための重要なツールだ。福岡市薬の田中泰三会長は「医師会からは『気付いたことを医師にフィードバックする薬剤師の役割に最も期待している』と言われている。今後、様々な情報が電子化、共有化され、医療者間の連携が今以上に求められる。その将来を見据えて、今からその下地を構築しておく必要がある」と話している。