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腸間膜静脈硬化症の原因の1つとされる生薬・山梔子(サンシシ)の使用実態調査を実施

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2018年09月06日 PM02:30

三重大学医学部附属病院でのサンシシ含有製剤の処方状況を調査

三重大学医学部附属病院薬剤部の野中千絵氏は、腸間膜静脈硬化症の原因の一つとして疑われている生薬の山梔子(サンシシ)について、同病院での使用実態調査を行った結果から、医師の中には山梔子を含む漢方薬の処方を長期にわたって行っているケースも散見されると報告した。院内報などによる医師全体への注意喚起では不十分で、処方医に対する個別の情報発信や薬剤師による対応状況確認など双方向の情報伝達が必要との認識を、第21回日本医薬品情報学会総会・学術大会で発表した。

(mesenteric phlebosclerosis:MP) は、腸間膜静脈の石灰化に起因した還流障害による慢性虚血性大腸病変。主な症状は腹痛、下痢、悪心・嘔吐で、イレウスなど重症化することもある。 2013年に厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等克服研究事業「腸管希少難病群の疫学、病態、診断、治療の相同性と相違性から見た包括的研究」班の全国調査によりMPの発現に山梔子の関与が有力視されている。

山梔子によるMP発現の機序については、山梔子中に含まれるゲニポシドが腸内細菌によって加水分解され、産生されたゲニピンが、大腸から吸収されて腸間膜静脈を通って肝臓に到達する間に、アミノ酸やたんぱく質と反応して青色色素を形成し、これが腸間膜静脈壁の線維性肥厚・石灰化を引き起こすと考えられている。概ね5年以上山梔子を服用した場合にMPを発現すると言われ、一部報告ではその頻度は0.8%とされている。この件については2018年2月に山梔子を含む漢方薬での添付文書改訂が行われ、長期服用に当たっては定期的にCT、大腸内視鏡等の検査を行うことが望ましいと付記された。

処方医とのより密な情報連携の必要性

野中氏は2014年3月~2018年2月までの4年間に、三重大学医学部附属病院で山梔子含有漢方製剤処方歴のある患者を抽出。カルテから処方期間、自覚症状(血便、腹痛、便秘、下痢、悪心・嘔吐、腹部膨満感)の記載、CTまたは内視鏡検査実施の有無を検索した。該当患者は640人で、漢方製剤別割合は加味逍遙散が39%、防風通聖散が36%、加味帰脾湯が8%、荊芥連翹湯が4%、黄連解毒湯と辛夷清肺湯が各2%、その他が9%。診療科別処方割合は麻酔科が29%、産婦人科、精神科が各13%、総合診療科が9%、皮膚科が7%、糖尿病内分泌内科が6%、神経内科と耳鼻咽喉・頭頸部外科が各4%、歯科口腔外科が3%、その他が12%だった。

このうちMP発現の可能性が高くなる5年以上の長期処方患者は14人(処方期間5年~13年7カ月)で、MP類似の自覚症状を訴えていた患者は嘔吐と腹痛が各1人で、いずれも対症療法および経過観察で軽快しており、MPが強く疑われる事例はなかった。同院薬剤部では添付文書改訂後、改訂情報を掲載した院内定期報とともに、注意喚起を目的とした「くすりの適正使用情報」を発行している。14人のうち2人は院内報発行前にCT、内視鏡による画像検査が実施されていたが、院内報発行1か月後に14人について改めてカルテなどを参照したが、処方変更や検査の実施など、新たに対応を取られている患者はいなかった。

野中氏は過去の報告から、MPでは2割超で自覚症状のない症例があることから、現時点で発見されていないMP患者が存在する可能性を指摘し、処方医とのより密な情報連携の必要性を強調した。

 

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