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【薬学教育学会で議論】EBM教育の重要性強調-臨床現場で実践が課題に

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2018年09月05日 AM10:15


■薬学教育学会で議論‐コアカリ明記、なお模索

改訂薬学教育モデル・コアカリキュラムに方向性が明記されたEBM(科学的根拠に基づく医療)を実践できる薬剤師をいかに養成するか――。1日に都内で開かれた第3回日本薬学教育学会大会のシンポジウムでは、全国の薬学部、薬科大学で取り組みが模索されているEBM教育をめぐって議論した。臨床判断における一連の行動様式であるEBMは、処方された医薬品の情報を薬局や病院で薬剤師が批判的に吟味し、調剤や患者対応に生かすために欠かせないスキルとされるが、大学での教育は充実していないのが現状。こうした中、カリキュラムに演習を取り入れ、実務実習を通じて臨床現場でEBMを実践していく必要性が強調された。

EBM教育をめぐって熱い議論を交わした

EBMは、▽疑問の定式化▽疑問についての情報収集▽得られた情報の批判的吟味▽情報の患者への適用▽適用結果の評価――の五つのステップからなる。佐々木順一氏(広島国際大学薬学部准教授)は、2015年度に行った調査から、多くの大学ではコアカリに明記されているランダム化比較試験、オッズ比など、主な研究デザインと効果指標は教育されていた一方、コアカリに記載されていない項目はほとんど教えられていなかったことを紹介。EBM教育が充実していると回答した大学は3割にとどまった。佐々木氏は、教育時間や演習機会、適切な教材が不足していること、教員側の問題といった課題を列挙。「教材不足と教員の問題については、研修や教材開発で対応できるのではないか」と述べた。

大津史子氏(名城大学薬学部教授)は、医薬品情報学のカリキュラムにEBM教育を組み込んでいる同大の取り組みを紹介した。3年次に講義と共に6日間の実習を行っており、その中で無作為化比較試験の批判的吟味も実施。さらに、4年次ではPBL(問題解決型学習)形式の症例中心とした学習の中でEBMの実践を促しており、大津氏は「EBM教育は必須」と強調した。

上田昌宏氏(兵庫医科大学ささやま医療センター薬剤室)は、EBMを実践する上で得た知識を臨床現場で活用するため、大阪薬科大学の4年次学生270人を対象にTBL(チーム基盤型学習)を導入した事例を紹介した。EBM概論の講義ビデオ配信などの事前学習、課題論文の重要ポイントを中心に問題が出題される個人演習、チームで問題に挑戦するグループ演習を実施後、講師による解説講義を行う。さらに、仮想シナリオにより知識と技能を活用できる発展課題を提供し、EBMの実践を経験。シナリオワークから患者への適用を検討し、患者への応対に取り組むことができるという。これらの経験から上田氏は、臨床現場でEBMを実践する必要性を強調した。

一方、青島周一氏(中野病院薬局)は、臨床現場で働く薬剤師が学ぶ場をインターネット上で提供している「」(JJCLIP)の取り組みを紹介した。青島氏は、多くの薬剤師が臨床医学論文の情報を十分に活用できていないものの、論文を読む必要性を感じているとの調査結果を示し、「学びたくても学べない人は多い」と指摘。EBMを学び、実践するハードルを下げるためにJJCLIPを立ち上げた経緯を報告した。

JJCLIPは、スカイプ通話による論文の抄読会をネット上で開催し、会話内容はネットラジオのツイットキャスティングで全国配信。140字以内のコメントが投稿可能で、論文が苦手な薬剤師も気軽に参加できるのが特徴で、ワークシートを使用して論文の批判的吟味を行っている。

青島氏は、JJCLIPの視聴前後で論文を読む頻度が「全くない」人が約50%から約5%に大きく減少した調査結果を提示。結果の一般化は議論の余地があるとしつつ、「論文を読むことのハードルが高い中、入り口を作っていることに役立っているのではないか」と総括した。また、EBMを学ぶためのNPO法人を立ち上げたことも紹介し、「オンラインとオフラインをつなぐ形でEBMを学ぶ場を提供できれば」と展望した。

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