■日紫喜東邦大准教授が提案
東邦大学理学部情報科学科の日紫喜光良氏(准教授)は、25~26日に栃木県宇都宮市で開催された日本病院薬剤師会関東ブロック第48回学術大会で「人工知能(AI)と薬剤師の未来」をテーマに講演し、未だにOTC薬などの物販を軽視している薬局が多い現状を問題視。薬局での販売を促す方法として、AIが訪れた相談者の血液の異常を判断する「モバイルヘルス」というシステムを活用し、判断結果に基づいて薬剤師がOTC薬選択などのアドバイスを行うことを提案した。
日紫喜氏は日本の医薬分業について、「ほぼ達成したように見られる」と評価した。一方、「調剤業務に偏重してOTC薬や医療衛生材料を取り扱わない薬局が多く、地域住民が気軽に医薬品の購入や健康相談に訪れることができる場所になっていない」と指摘。
その上で、「自分が病気にかかっているかどうか分からない人が医師に状態を説明することは難しい」とし、「薬剤師が科学的根拠に基づいてOTC薬を住民に薦め、病気を未然に防ぐことが重要」と述べた。
科学的根拠を示す方法として、AIの活用を提案。具体的には、スマホから健康に関する情報を収集できる「モバイルヘルス」を活用すべきとした。
モバイルヘルスは、相談者が自身で採取した血液をフィルターなどに載せ、血液中の蛋白質に反応して変色したフィルターの色をスマホで読み込んだ後、クラウドにデータを送ると、膨大なデータベースからAIが異常の有無を判断するというもの。判断結果は薬剤師に送信され、その結果をもとにOTC薬の選択をアドバイスできるようになっている。
日紫喜氏は、「科学的根拠に基づいてOTC薬を患者に勧め、患者の自己決定権を尊重する。もっと薬剤師が誇りを持って医薬品を販売すれば良いのではないか」と強調。医師でもある日紫喜氏は、AIを利用して病気を未然に防ぐことについて、「医師が電子カルテを見るよりも、AIの方が有効かつ正確に状態を予測できる時代が来るのでは」と述べた。
また、モバイルヘルスが、既に小児の皮膚病変の診断など皮膚疾患の領域を中心に使用されていることに言及した上で、「将来的には高齢者のフレイルと低栄養に関してスマホを利用した情報収集や評価システムが構築されるのでは」と見通した。