CHR5がイソフラボン生成の鍵となる反応を司るIFSと結合
東北大学は8月24日、ダイズの健康機能成分として知られるイソフラボンの一種「ダイゼイン」の生成の鍵酵素「カルコン還元酵素」の特定のアイソザイムが、ダイズ細胞内で代謝的に関連の深い他の酵素と複合体を形成することを見いだしたと発表した。この研究は、同大大学院工学研究科の中山亨教授ら(バイオ工学専攻応用生命化学講座)と、東京大学大学院医学系研究科の河合洋介助教らとの研究グループによるもの。研究成果は、専門誌「ザ プラント ジャーナル」(電子版)に掲載された。
画像はリリースより
ダイゼイン生成の鍵酵素であるカルコン還元酵素(CHR)には、これまでにCHR1~CHR4の4つのアイソザイムが知られていた。研究グループは、あらためてダイズのゲノム配列を検索し、これまで未同定だったCHRアイソザイムも含め、全部で11個のCHRアイソザイムの存在を確認。これらのうち、CHR1、CHR5、CHR6の3つのアイソザイムが明確なCHR活性を示し、CHR5の遺伝子発現がダイズ植物体におけるダイゼインの蓄積パターンと最も良い相関を示したという。
次に研究グループは、酵素活性の認められた3つのCHRアイソザイムについて、イソフラボンの生合成に関わる他のすべての酵素との結合の有無をさまざまな方法で調査。その結果、CHR5のみがイソフラボン生成の鍵となる反応を司る膜結合型酵素イソフラボン合成酵素(IFS)と結合できることが判明したという。
酵素間の結合のネットワークの存在を提示
研究グループは、2016年にはカルコン合成酵素(CHS)とIFSが結合できることなどを明らかにしていたことから、今回の研究の結果も総合して、酵素間の結合のネットワークの存在を提示し、推定される酵素複合体をイソフラボノイドメタボロンと呼んでいる。ダイズ細胞内においてCHSからCHRへの「中間体」の高効率な受け渡しが可能となっているのは、両酵素がそれぞれIFSとの結合を介してイソフラボノイドメタボロンに参画することにより、互いに近傍に存在できるからであると考えられるという。
生体内で観察される高い代謝機能が、代謝経路を構成する個々の酵素について試験管内で調べられた反応の性質だけでは十分に説明できない場合は多く、ダイズCHRの反応もそのような例のひとつだったが、メタボロン形成の発見が鍵となり、その理解が進むこととなった。今回、メタボロン形成の機能的重要性を明確に示したことにより、同研究の成果は代謝工学の進展にも大きく貢献するものとして注目される、と研究グループは述べている。
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