一部の緑内障では眼圧コントロールが良好でも病状が進行
東北大学は8月24日、緑内障モデルマウスを用いて、視神経障害のバイオマーカーを同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科眼科学分野の中澤徹教授、佐藤孝太助教、同大東北メディカル・メガバンク機構の山本雅之教授、三枝大輔講師らのグループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。
画像はリリースより
緑内障は、網膜神経節細胞が障害を受けて視野が狭くなる疾患。国内における40歳以上の緑内障有病率は5.0%(20人に1人)と報告されており、中途失明原因としては1位の疾患だ。
現在、緑内障の治療は点眼薬や手術によって眼圧を下げることが第一選択とされている。しかし、眼圧コントロールが良好であっても病状が進行してしまう緑内障患者が少なくないということが問題視されていた。
L-アセチルカルニチンが病態進行の指標となる可能性
今回、研究グループは、眼圧以外の要因で進行する緑内障の病態解明のため、モデル動物として視神経挫滅マウスを作成。すでに確立した網羅的メタボローム解析手法を用いて、病態モデルマウスから得られた網膜に含まれる生体分子の解析を行った。
これにより得られた成分の多変量解析から、病態の進行に伴って有意に変化する成分を抽出して質量分析を行い、緑内障の進行度に伴って変化する分子を同定。さらに、網膜神経節の細胞死に先立って網膜内の核酸塩基が減少し、複数種のリン脂質が増加することを見出した。また、「L-アセチルカルニチン」がガングリオン細胞層において顕著に増加していることも判明。緑内障の進行度を予測するバイオマーカーとしてL-アセチルカルニチンが有用である可能性も示したという。
今回の研究では、眼圧非依存的な視神経障害を原因とした網膜神経節細胞死に関連する可能性の高い分子が明らかになった。この分子の機能を解析することにより、新たな緑内障治療における創薬あるいは医療技術の開発が期待される。今後について、研究グループは、「ヒト臨床検体での詳細な解析やコホート研究におけるオミックス解析等のビッグデータ解析を通じて、緑内障の疾患予防に資する新たなバイオマーカーの開発と、臨床診断への応用を目指した研究を進めていく」と述べている。
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