■2年後に東海大と本格実習
昭和薬科大学は、9月から多職種連携教育(IPE)をスタートさせる。聖マリアンナ医科大学、杏林大学医学部、東京大学医学部の3大学と連携し、まず医学生と薬学生によるIPE実習として、4年生全員が模擬症例を用いたスモールグループディスカッションを実施する。さらに、2020年からは病院、薬局の臨床現場を目指す6年生を対象に、東海大学の医学生、看護学生、福祉学生とのアドバンストIPE実習を実施する予定だ。単科薬科大学によるIPE教育は珍しく、昭和薬大は基礎系教員も含めて大学全体でIPE教育に取り組んでいきたい考えだ。
多様な医療ニーズに対応するため、チーム医療の重要性が増す中、改訂薬学教育モデル・コアカリキュラムではIPEの考え方が追記され、学生時代からチームの一員として多職種連携の必要性を理解するための教育が求められている。
ただ、これまでも医療系総合大学ではIPEの取り組みが先行して進められてきたが、単科薬科大学がIPEを実施するためには、他の医療系大学との連携が欠かせない課題があった。
こうした中、昭和薬大は、9月から4年生全員を対象としたIPE実習を実施することを決めた。これまで実務実習で協力関係にあった聖マリアンナ医大、杏林大医学部、東大医学部の3大学医学部と連携し、まず医学生と薬学生の2職種によるIPE実習を始める。
東大医学部との実習には聖路加国際大学の看護学生も参加する予定。昭和薬大の4年生270人のうち、聖マリアンナ医大との実習に160人、杏林大との実習に60人、東大との実習には50人を派遣する。
特に聖マリアンナ医大とのIPE実習に参加する160人については、多くが5年次の実務実習を聖マリアンナ医大病院で行えるようにし、同じIPE実習を経験した医学生と共に実務実習を受けられる環境を作りたい考えである。
具体的な実習内容は、医学生2人、薬学生2人の計4人を1グループとし、模擬症例を用いたスモールグループディスカッションを行う。医学生、薬学生が相互に最新の知識を補える症例を作成、議論する予定で、グループディスカッションを行った後には発表会を行い、現場医師の解説を付けてフィードバックする。今年度は、9月15日に聖マリアンナ医大とのIPE実習をスタートし、10月20日に杏林大、12月14日に東大と実施する予定。
さらに第2段階として、20年からは今年3月に学術交流協定を締結した東海大学とアドバンストIPE実習を行う予定である。病院、薬局の臨床現場を目指す6年生が対象で、東海大学の医学部6年生、健康科学部の看護学科4年生、社会福祉学科4年生と、医・看護・薬・福祉の多職種参加型のIPE実習を行う。今年度に医学部とのIPE実習を経験し、さらに2年後の6年次に本格的なアドバンストIPE実習につなげる構想だ。
昭和薬大臨床薬学教育研究センター実践薬学部門の渡部一宏教授は、「単科大学がIPE教育に取り組むことは簡単ではないが、ようやくできる環境が整った。これをきっかけに、他の単科大学にも刺激を与えられるのではないか」と話す。昭和薬大はIPE教育に大学全体で取り組んでいく方針で、基礎系教員も症例検討のグループディスカッションにチューターとして参加してもらう方向だ。
渡部氏は「薬学教育が6年制になり、医療系大学として成り立つには、薬剤師教育は基礎系教員も含めて全ての教員が取り組むべき。IPE教育の取り組み自体が大学教員のファカルティ・ディベロップメント(FD)につながっていくのではないか」と期待を寄せている。