医療レセプトと介護レセプトのデータを突合・分析
筑波大学は8月15日、医療レセプトと介護レセプトのデータを照合し、分析した結果、介護老人福祉施設の入所者は、介護老人保健施設の入所者に比べて、全体の入院率と予防可能な入院率が高いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大ヘルスサービス開発研究センターの田宮菜奈子センター長/教授、Boyoung Jeon客員研究員(2017年常勤研究員、現在は韓国ソウル大学保健環境研究所)らが、東京大学、東京都健康長寿医療センターとの共同で行ったもの。研究成果は「Geriatrics and Gerontology International」に掲載されている。
画像はリリースより
医療・介護の連携は、地域包括ケア推進政策において、喫緊の課題となっている。また、利用者が増大する介護サービス、特に施設ケアの質の評価は重要課題だ。特に急性期病院への入院は、高齢者、それも介護施設に入所している人の障害および認知低下のリスクを増加させることが明らかになっている。そのため、入院を減らすことは、生活の質を向上させ、入所高齢者の医療費削減につながると考えられている。
予防可能な入院率、老健の9.5%に対して特養は16.3%
今回の研究は、千葉県柏市の医療介護連結レセプトデータを活用し、介護施設から急性期病院への入院率および入院の理由(予防可能な入院、予防不可能な入院、病院内の死亡)と、その関連要因を明らかにすることを目的に実施された。後期高齢者の医療記録データと介護レセプトデータ(2012年4月~2013年9月)を用い、「介護老人福祉施設(特養)」(n=1138)と「介護老人保健施設(老健)」(n=885)の入所者2,065人(75歳以上)を対象に分析を行った。
その結果、特養の入所者は、老健の入所者に比べ、全体の入院率と予防可能な入院率が高いことが判明。特養の入院率は34.5%、老健の入院率は23.8%で、予防可能な入院も、特養では16.3%、老健では9.5%だった。また、利用者の状況などを考慮した多変量解析の結果では、人工栄養ありの場合に予防可能な入院リスクが高いことがわかり、施設間の差も有意だったという。
予防可能な入院は、在宅や施設など地域ケアの質の指標として重要だ。医療体制が充実している老人保健施設における予防可能な入院率が介護老人福祉施設よりも少ないことは、医療資源投入の効果と考えられる一方、介護老人福祉施設における医療対応にも検討の余地があると考えられる。
今回の研究で、介護レセプトと医療レセプトのデータを照合させることにより、介護施設の入所者の入院という医療介護連携の重要事項について、日本初のエビデンスが得られた。研究グループは、「今後公開が予定されている全国レベルでの介護データベースの研究が進むきっかけとなることが期待される」と述べている。
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