JSMO2018で杏林大学 古瀬氏が発表
7月に神戸で開催された第16回日本臨床腫瘍学会学術集会で行われたセミプレナリーセッションで、杏林大学医学部付属病院 古瀬 純司氏が、大腸、胃、膵臓の進行がん患者を対象とした、選択的グレリン受容体作動薬のanamorelin(国内未承認)の国内多施設非無作為化オープンラベル試験の結果について報告を行い、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者と同じく、進行消化器がん患者においてもanamorelinが、がん悪液質の有効な治療オプションになる可能性が示された。
がん悪液質は、進行性の骨格筋減少を特徴とする複合的な代謝障害で、がん患者の50~80%に発生し、がん死亡の 20%を占めると推定されている。とくに消化器がんや肺がんで多くみられ、その骨格筋量の変化に伴う体重減少により、抗がん治療への耐久力やQOLが低下し、予後が短縮するといわれている。European Palliative Care Research Collaborative (EPCRC)では、悪液質の診断基準として、6か月以内に5%超(body mass indexが20 kg/m2未満では2%超)の体重減少、あるいはサルコペニア(筋肉減少症)で2%超の体重減少を認める、としている。
がん悪液質の治療は、より早い病期から
がん悪液質の薬物治療については、2017年にanamorelinが日本人の進行NSCLC患者の除脂肪体重(LBM)を有意に増加させたことが報告され、別のがん種におけるanamorelinの有効性について、検証が待たれていた。
古瀬氏によると、anamorelinによる12週でのLBMの増加は1.89kgであり、食欲関連QOLスコアの改善も認められた。また、全Gradeの有害事象は42.9%に認められたが、Grade3で頻度が高いものは糖尿病6.1%(3例)であり、忍容性も良好であった。
現在、栄養指導や軽い運動の励行、薬物的介入などを集学的に行うことが、がん悪液質による体重減少の進行を緩和し、QOLを改善させるアプローチだと考えられている。病期分類については、EPCRCにより「前悪液質・悪液質・不応性悪液質」の三段階が提唱されている。近年、治療が困難となる「不応性悪液質」になる前に、できるだけ早期から介入するという観点から、「悪液質」、さらにその前の「前悪液質」が重要視されつつある。同セッションのディスカッサントである、大分大学 医学部腫瘍・血液内科学講座の廣中秀一氏は、anamorelinによる早期介入について「対象のがん種を拡大した更なる検討を要する」と総括した。
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