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薬局薬剤師が生活改善支援-効果検証の臨床研究スタート

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2018年08月22日 AM11:15


■アルバータ大開発ツール活用

カナダ・アルバータ大学が開発したツールを活用し、薬局薬剤師が糖尿病患者に実施する生活習慣改善支援の効果を検証する臨床研究「RxINGレジストリジャパン」が今年6月から日本で始まった。このツールは、来局した糖尿病患者の処方薬、検査値などのデータを専用のウェブサイトに入力すると、エビデンスに基づきその患者の心血管疾患発症リスクを表示。何をどう改善すればそのリスクがどれだけ低くなるのかを示すもの。薬局薬剤師はこのツールを活用し患者の生活習慣改善を支援する。参加薬局は既に90薬局以上に到達。200薬局の参加を目標に研究を進める計画だ。

この研究を企画したのは、薬剤師の岡田浩氏(京都大学・京都医療センター)、ツールを開発したロス・ツユキ教授(アルバータ大学)らの研究グループ。海外では、薬局薬剤師による糖尿病患者への介入によって血糖コントロールが改善することは明らかになっている。しかし、特別な介入ではない、薬局薬剤師の日常的な情報収集や生活習慣に関する情報提供による効果はほとんど検証されていない。ツールの有用性に加え、薬局薬剤師の日常業務の効果を検証する目的で、今回の研究を設計した。

6月の開始以降、研究に参加する薬局は段階的に増加している。ファーコス、クラフト、中川調剤薬局の各チェーン薬局が組織的に参加するほか、個人経営薬局も参加しており、現在90薬局以上に到達。既に30人以上の患者から同意を取得した。200薬局、200人の患者の参加を目標に研究を進めている。

研究に参加する薬局薬剤師は、同意を得た糖尿病患者の初回来局時に治療歴や家族歴、体重や血圧値、HbA1c値、コレステロール値、喫煙の有無、現在の処方、アドヒアランスや副作用の状況など様々な情報を聞き取り、専用のウェブサイトに入力する。入力した数値は自動的に解析され、エビデンスに基づいて、その患者の10年後の心血管疾患発症リスクが示される。さらにコレステロール、血圧、、HbA1cの4要素がそのリスクにどの程度関与しているのかを円グラフで表示。画面上のスライドバーを操作し4要素の数値を変動させると、連動して心血管疾患発症リスクの数値も変わる。どの要素をどこまで改善したら、リスクがどれだけ下がるのかをひと目で理解できる。

薬局薬剤師は心血管疾患発症リスク評価レポートを患者に渡し、血糖値、血圧、喫煙などのリスクを説明。▽血圧や血糖値を下げるコツ▽食生活改善のポイント▽日常に運動を取り入れる工夫――などを分かりやすく解説した資料を必要に応じて提供し、生活習慣の改善を支援する。

次回以降も来局時に必要な数値を聞き取って入力し、評価レポートを提示。生活習慣改善の支援を続ける。こうした介入を1年間続けることによって心血管疾患発症リスクがどう変化するかを検証する。

糖尿病の合併症である網膜症や腎症などの細小血管障害は、良好な血糖コントロールを維持することで抑制できる。一方、脳梗塞や心筋梗塞などの大血管障害を抑制するには、血糖値だけでなく、血圧やコレステロール、禁煙などのコントロールも重要になる。

研究グループは、検査値を聞き取り、健康的な生活習慣の情報提供を行う薬局薬剤師の日常業務が、心血管疾患発症リスクの改善や処方薬の減量につながるのであれば、「薬局薬剤師の活用が医療費増大と医療者不足の解決策の一つになる可能性がある」としている。

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